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現場仕事と仲間のこととか、たまにイデオロギー的なことをつれづれに。 読んだ本、すきな音楽やライブのことだとか。 脈絡無く戯言を書き殴る為の、徒然草。
2024/05/06/Mon
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2010/11/27/Sat
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。


いつも慌てて心の中で唱えた。

その瞬間、神とかいう抽象的な存在に、こころを見透かされているような気がしたのだ。



ハルコさんなんて、今すぐ死んでしまえばいい。



そう強く思った、瞬間に。


「あたし、本当に死ぬかもしれないのよ」

何言ってんだ、今更。
そう思った。
ハルコさんは、少し怯えていた。
癌らしい。
それは手術が必要で、オペの日には家族の同行が必要らしかった。

それらは後になって知ったことだが、言われなくてもそんなこと、何となく判っていた。


それがどうしたの?

いつもあんたがやってた報いがきただけやん。


「あたしがいないと、何にもやらないクセに」


間違ってないよ。

「やらない」けど「出来ない」わけじゃないことは、この人が一番よく知っている。

だって自分が、何でも出来る子供に育ててしまったんだから。


台所でもたもたしているハルコさんに、早く行きなよ。と追い立てた。



その時にはじめて、この人は自ら「死」を口にしたのだ。



この後ろ姿を見るのが、最後になるかもしれない。


絶望とも安堵ともつかない、混沌とした感情が渦巻いていた。

背中から、目を離した。


出来るだけ、何も、覚えていたくない。

帰って来ないなら、こんなにありがたいことはないじゃないか。


そう、強く思った。


最初から判ってたことだ。

案外長引いてしまったけれど、今日でやっと、さよならできるんだ。



これはあくまでも結果であって、あの人がやってきた事への今までの報いなのだ。

生まれ育った家族を捨て、自ら作り上げようとした家庭を打ち壊してしまった事への、報いなのだ。



誰にも看取られずに、悲しみの中で死ねばいい。





それから、穏やかな日々が流れた。

ハルコさんのいない日常は、こんなにも落ち着いていて、緩やかに流れるものなのかと思った。


もうずっと、こうして暮らしてきたかのような錯覚に陥る。

ぜんぶ、夢だったんじゃないだろうか。

ハルコさんと暮らした11年間の、ぜんぶ。



電話が鳴った。

もうこの家は、「沢村さん」家じゃなくなったんだ。

電話には、出る必要がなくなった。


鳴り響く呼び出し音を数えながら、電話機を見つめ続けた。


何コールか目で電子音の甲高い音が鳴り、留守番電話の音声に切り替わる。

お決まりの常套句。
その後に、聞き慣れない声が聞こえてきた。


「ちょっと、誰もいないの?電話ぐらい出なさいよ!言い忘れてたことなんだけど、……」


声は、冷凍庫の中には作りかけのおかずがあって、といったことを長々と語りだした。


何言ってんだ、この人。


そう思ったけれど、おれは静かに電話機に近づいて、録音ボタンをプッシュした。


テープが巻き取られていく。

録音可能な限り、回った。


電話が切れると同時に停止ボタンを押し、そのテープを取り出し、ひっくり返した。





○ ◎ ○


案外、人生も精神も、タフなものです。

まだ生きているのですよ、無駄に。



16年前の、いつかの日の出来事。

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2010/11/27/Sat
生きる気力がなくなるとき。


辞表を出して、転職活動をしよう、なんて明るい未来は思い描けないだろう。



職を失うことは食を失うことで、選択肢は自滅しか思い浮かばなくなるのです。


誰でもそうだなんて、思ってませんよ。


でも、少なくともあたしには、あぁ、しにぎわの身辺整理が始まったんだな、と思うのです。



あたしには、自滅という死の刷り込みがあって、この発想からは一生逃れられないのです。


生きてる限り。


ほら、灯りをつけて。

包丁を持ったあの人が手を差し出す。



しぬ勇気もないくせに。

早くしなよ。

どうせあんたもあたしも、今ここで死ぬんだからさ。

と。

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2010/11/26/Fri
18年前。
バブル崩壊真っ只中の頃。

沢村家は火の車で、当時小学4年生だった私も家で内職のバイトをしていました。


それは、喪服の纏り縫い。


懐かしいです。


いま、自分のスーツの袖がほつけてたので、18年ぶりに纏り縫いをしました。


当時は同じような服を延々と何着も何着も縫ったものです。


いまや、自分のスーツ1着のほつれを1年以上放置した結果、やっと縫いましたが。


出来栄えは……正直、腕が落ちたな。。。

といった感想ですね。



ぎっくり腰で会社休んでるもんで、暇なんですよ。

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2010/11/25/Thu
ホウちゃんと繋がりたい。



クラスの女の子たちが男子の名前を上げてかっこいいだのやさしいなどと騒いでいるのを片目に眺めながら、あたしは思っていた。

そんなとこはどうでもいいのよ。

あたしはもっと、だいすきな彼女と24時間一緒にいたいの。


でも、こんなことを言ってしまうと「レズ?」と言う子が出てきてしまうので、絶対言わない。


ホウちゃんはクラスの人気者。


決して美人ではないけど、いつも明るくてサバサバした性格で、男子にも女子にもモテている。

交換日記なんて1人で6冊も抱えている人気っぷりだ。


対してあたしは喧嘩ばかりしているクラスの問題児。

粗暴な態度や発言、更にはガラの悪いとされる出身地というお墨付きもあって、担任からは濡れ衣をしょっちゅう着せられる始末。

そんな転校生のあたしに、変わらない笑顔で接してくれたホウちゃんとは、あたしも交換日記を2冊していた。


ひとつは1冊を仲良し6人で回している、上辺だけの友情アイテム。

もうひとつは、個人的にホウちゃんとだけ交換しているノート。



交換日記はタイムラグがある。

タイムラグがある方が、待っている間わくわく出来ていいかもしんない。


けど、待ちきれないんだ。


今の世の中、いつでも相手と繋がれていると実感出来る電子機器が開発されてもいいんじゃないか?

最近、便利だと言って中高生の間で流行り出したっていう、ポケットベル。

正直あんなもの、煩わしい。

便利だと言いながら、わざわざ公衆電話まで走らなきゃならなくって、暗号化した文章しか使えないなんて。


世間はまだこんなにも、時代に追い付かないものなんだろうか。


ラジオの電波のように、決まった地域で、決まった周波数さえ使えば、いくらでも相手と交信出来る技術が世の中にあるというのに。


もっとタイムラグが少なくて、お金がかからない交信手段ってないのかな?

それでいて、いつでもあの子と繋がっていられるもの。


「あたしが作れる範囲でいうと、トランシーバーなんじゃない?」


ホウちゃんの家とあたしの家の直線距離は2キロ弱。

これなら、誰にも文句は言われず、彼女と繋がっていられるかもしれない。



○ ◎ ○


15年前の、1995年のお話。

小学生だったあたしが考えていたことは、5年後の高校生になった頃流行り出した「携帯電話」という文明の利器によって解決されました。


最近、ホウちゃんが結婚するそうだという噂を聞いたので思い出した出来事。


そして今は仕事で随分と「トランシーバー」のお世話になっています。

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2010/11/18/Thu
それは、風の強い、とても強い日でした。


あたしはやっぱりあの人に追われていて、包丁片手に追いかけてくるあの人を振り切って、必死の思いで階段を駆け上がったのでした。


開いててくれ。

もし、扉が開いてなければ、その時点で終わってしまうだろう。


そんな不安を抱えながらノブに手をかけ、力を込めました。



……幸運にも、扉は開きました。

今日は、誰かが鍵を開けてたみたい。

何故?


そんなこと、考える余裕はありませんでした。

素早く其とに周り込み、扉を閉め、貯水槽の後ろに身を潜めました。


その日は風が強くて。

誰かが階段を上がってくる音も、扉が開く音も、何もかもが、風で掻き消されてしまうのです。


時が異常に長く感じられて、心臓の音が煩くて、このままこの恐怖感にころされてしまうんじゃないかとさえ思いました。


一度身を潜めると、そこから一歩も動けなくなって。

ただただ耳を澄まして、でも聞こえてくるのは風の音ばかりで。


どれくらい経った頃か判りません。


彼女はあたしを見つけてしまいました。


もう、右手には何も持っていませんでした。


そしてあの人は、座り込んでいるあたしを見下ろし、こう云いました。


「逃げるなら、地上に逃げなきゃ。だからこうやって、すぐ追い詰められんだよ」





永い永い、夢を見ました。

今朝。

これはちょうど、20年前の、風の日の出来事。


トラウマは悪夢に形を変えて。
あの人は夢の住人になって。
未だにあたしを追い詰めてくるのです。


目覚めれば、やわらかい朝が待っているというのに。

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2010/10/30/Sat
いつかきっと、殺される。

少女は日々そう感じながらも離れられない現実に苛立っていた。
眠らなくていいように、他人が寝静まった深夜にそっと夜風に吹かれに外へ出た。



いつか本当に、殺してやろうか。

少年は安らぎの場所をぶち壊され、なるべく帰らなくていい理由を作った。
バイトに明け暮れ、年上の恋人と外で過ごした。



少女は大人になったら変われると思っていた。
けど、何も変わらなかった。
同じところを行ったり来たりして、結局は元の場所に戻ってしまうことを知った。



少年は諦めを覚えた。
ひとに興味を示さなくなって、他者との関わり合いを出来るだけ避けるようにした。
物事は頃合いのいいところで折り合いをつけて、適当に流すことで自分の精神を守ろうとした。



大人になったのに大人に成り切れない2人は、タバコと酒で繋がった。


「こんな場所に集まる連中はきっと複雑な過去があるんですよ」

かつての少年ははにかんで言った。


かつての少女は複雑な過去なんて笑い飛ばした。

特別な関係なんて何処にもない。
けれど、秘密のキズを共有しあえる相手は、そうそう見つかるものでもない。

……それは、将来の配偶者であっても、共有出来ないかもしれない。



「あたしは此処でオマエに出逢えて、よかったよ」

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2010/10/30/Sat
悪夢にうなされる。



物心付いたころから、ずっとずっと、記憶の片隅にあるもの。


忘れたと思っていても、決して消えることのない記憶。


あの時の風景が、今の世界にリンクして、あたしの日常を粉々に壊そうとしてくる夢を見る。


何度も、何度も。


もう大丈夫だったつもりなのに。


これは、決して消えることのない記憶のキズ。


現実では微笑んでいるあの人が、夢の中ではカミソリ片手に手首から血を流しながら鋭い眼光であたしを睨む。


これは現実の出来事ではありません。


けど、それに近い出来事が、きっと二十余年前に起きていて、あたしは未だにその時の恐怖感に苛まれているのでしょう。


この先もきっと、変わらない。

十年後も、五十年後も。


あの人が死んでしまえば変わるかもしれない。

あたしに新しい家族が出来れば変わるかもしれない。


以前抱いていた、そんな希望的観測は捨て去ってしまった方がきっとラクだ。


この悪夢と、ちょうどいい距離感を保ちながら、一生付き合っていくしかないのだろう。

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サワムラの主催する小劇団…のはず。2012年に旗揚げ公演を行い、2014年現在、5月公演に向けて準備中。

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サワムラヨウコ
自己紹介:
二十代半ば(から始めたこのブログ・・・2014年現在、三十路突入中)、大阪市東成区出身。
乗り物の整備をしている、しがないサラリーマン。
3度の飯より睡眠、パンクなライブ、電車読書、などを好む。
この名前表記のまま、関西小劇団で素人脚本家として細々と活動中でもある。

1997年頃~2006年ごろまで、「ハル」「サワムラハル」のHNで創作小説サイトで細々とネットの住民してたがサーバーダウン&引越しによるネット環境消滅が原因で3年ほど音信不通に。。。
あの頃の自分を知っているヒトが偶然にもここを通りかかるのはキセキに近いがそれを願わずにはいられない。
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