現場仕事と仲間のこととか、たまにイデオロギー的なことをつれづれに。
読んだ本、すきな音楽やライブのことだとか。
脈絡無く戯言を書き殴る為の、徒然草。
2012/04/05/Thu
※しぶといようですが、先に云っておきますけどこれは「オトメ小説」です。
*----------------------------*
久しぶりに遠足前の子供のようにわくわくした。仕事の一環だけど、出勤する場所はいつもと全然違う場所と土地。オマケに、寝泊りするのはシティホテル。そして頭も体力もたいして使うことの無い一週間。この条件を聞いて、喜ばずにいられるか。否、無理でしょう。
「課長、あのバカふたりを一緒に行かせて大丈夫なんですか」
なんて纐纈さんに囁かれてしまったけど、そう云われるのも致し方ない。と我ながら思った。
安全衛生講習受講のための、訓練出張六日間。近場でやっていないため同期の青木とふたり、特急列車に乗って他県へと男ふたり旅だ。普段身に付けることのないスーツに袖を通し、ホテルから教習所までの朝の通勤電車に揺られるのもたまになら悪くない。ってかむしろ新鮮だ。この、満員電車に揉まれている感じ。憧れたことは無かったけど、朝の通勤ラッシュ。これぞまさに働いてるって感じ。俺ってサラリーマンじゃん。と無意味にテンションも上がる。いつもは作業着のまんま独身寮から会社まで単車に乗って出勤している身分なもんで、通勤ラッシュとも渋滞とも無縁だから尚更だ。
「岩原、昨日晩飯の後何してたん、」
青木とは毎朝、ホテルのロビーで待ち合わせして駅に向かった。もう三日目。電車の時間も覚えて余裕の出た俺たちは、一本遅らせても遅刻にはならないことを確認してまったりと歩く。
「特に。パチ行って、調子悪かったから結構すぐ帰って、部屋で映画観てた」
「あー、あれ、同じのずっとリピートしてんじゃん。俺見飽きたわ」
「でも観てんでしょ。なんか何回も観てると、笑えてこねぇ、」
「来る来る。『君のために、俺はこの命を捨てる覚悟だ』って云って飛び込むシーン。一回目は感動したのに、五回目になるとなんか笑えるよな」
「五回は観すぎだろ、どんだけ暇なんだよ」
ビジネスホテルの無料映画チャンネルは一週間同じタイトルを永遠と流していた。ちょうど宿泊期間中にタイトルが変わる日程になっていなかったため、今日も明日も明後日も、同じ映画しか見ることができない。
「五百円払えばアダルトチャンネル見れるじゃん」
「知ってる。でもあれ、古いやつしかなさそうじゃね、」
「そーでもないぜ、昨日はよしだ桃花のぶち抜き三時間やってたし」
「マジっ、それを早く云えよ。今晩見よっと」
「かおりじゅんこの出会って五秒シリーズもあったし」
「あれはいーや。五秒どころか五分経っても挿入しねぇじゃん」
なんて実に下らない会話をしながら改札を抜ける。出張なんてそんな頻繁にあるもんじゃない。いつもの自分の家を離れることは新鮮だけど、自分の家じゃないからホテルの部屋に戻ってもやることがない。だから自然と頭はパチンコとテレビとエロにシフトする。
「あのお部屋でマッサージサービスって、かわいいおねぇちゃん来ねぇのかなぁ」
「オバサンだったわ、掃除婦風の」
「もう試したのかよ、何期待してんだよ」
「だってマジ肩凝ったんだって、普段机に向かって授業聴くことなんてねぇからさぁ」
「それは確かに」
講習という名の知らないオッサンのお喋りは、学生時代の退屈な授業と大差無い。退屈すぎて講義中の半分は上の空で、まったく関係のない空想ばかりしている。教室には男性ばかりが二十名程度。隣り合った席を避け、疎らに座っている。俺たちみたいにスーツ姿の人間もいれば、自社の作業着らしき服装の者もいる。きっとまぁ、大体同じ様な職業の人間ばかりなんだろう。年齢層は割りとバラけている気もするが、全くもって女性がいない。どんな場所に行っても、とことん女性に縁のない人生なんだなと思い知らされる。古びた専門学校の校舎のような建物は、高年齢層の生徒ばかりの所為か覇気も活気もなく、心成しか照明まで暗い気がした。
「えー。では、昨日の続きですね。テキストの六十ページを開いてください」
耳慣れたようなセリフを教壇に立つオッサンが云った。あのオッサンは、いつからこんな仕事をしているのだろう。こんな、職場から強制参加させられているヤル気のない中年男ばかりを前にして、年中教鞭を振るう仕事をするって、実際どんな心境なんだろう。病んできたりしないだろうか。俺だったら、三日も持たない気がする。同じ無口なモノを相手にする仕事でも、車のエンジンいじってる方が数百倍楽しいだろうに。もしこれが、こんな寂れたビルの一角ではなく、高校だったなら。あのオッサンの抑揚のない喋りもいくらかマシな声音になるのだろうか。教室がもっと明るくって、そんでもって作業着のまま授業を受けるような工業高校でなくって、普通科の共学だったとしたら。普通科の、共学だったとしたら。
そこにはきっと、女子高生がいる。俺の青春には登場しなかった、華の女子高生が。そう、今朝も通勤電車の中で、制服姿の女の子を何人か見かけた。制服姿の女の子なんて日常生活ではまったく関わってこない存在だったから、朝から焦ってしまった。俺はほぼ男子校と云っても過言ではない工業高校の電気科出身で、家から二十分のチャリ通学で、女子高生とは無縁すぎる十代を過ごした。制服姿の女の子といえば、アダルトビデオという図式が脳内に成り立ってしまっている。我ながら、貧困すぎる発想。部活に文化祭に体育祭、共に汗を流して笑いあった思い出。そんなものが全くない。何だか、すげぇ損してる気がしてきた。あぁ、人生、もう一回やり直したい。
意気消沈して斜め向かいの青木に目をやると、ヤツは船を漕いでいた。ゆらゆらと頭が小さく揺れる。どうせ昨日、一晩中アダルトチャンネルを見てたんだろう。そうでなくっても、この授業は退屈だった。周りを見渡すと、寝ている人間も結構いる。一応、単位毎に試験はあるが、逐一マジメに聞いていなくても普段の業務内容のおさらいみたいなもんだったから、ある程度答えることは出来る。欠点を取る可能性は、まず無い。
今夜は何して時間潰そうか。ホテルの向かいにあるすき家に行って、シャワー浴びたら青木の云ってたアダルトチャンネルでも物色しようかな。よしだ桃花のぶち抜き三時間は俺も見たい。小柄で、でもEカップ巨乳のベビーフェイス。黒目がちのぱっちり二重の彼女が上目遣いに見上げるカメラ目線に、わざとだと判っていてもぐっとくる。そうだ、よしだ桃花といえば、女子高生モノが多かったはずだ。小柄で童顔の女優となれば、必ずついてくるレパートリー。こんな感じの薄暗い教室で、何故かヒロインの女優以外はみんな男子生徒ばかりっていうAVならではのシュチエーションのヤツを見た気がする。確か、最初は不良に目を付けられて、放課後軽く痴漢行為をされるんだっけか。女優は童顔だけど、男優が明らかに老け顔なのに学ラン着ているところが不自然なんだけど、それはまぁしょうがない。そんでもって、不良の痴漢に耐えかねた桃花が担任のオッサン教師に相談。そしたら何故かそのオッサン教師に保健室で犯されてしまうっていう筋書きだったような。しかも後日には何故か教師も不良も一般生徒も入り乱れての輪姦状態。って、何でこんな展開になったんだっけか。理解不能だ。そもそも、アダルトビデオにストーリー性なんて求めてないんだから、ヌける場面が随所に散りばめられていればそれでオッケーなんだけど。なんかあの時の男優、このオッサンに似てないか。こういういかにもな七三分けで、タータンチェックのセーターを着て、赤いネクタイ締めてた辺りが。そうだ、オッサン教師に犯されるシーンが煩わしくって、早送りしたからストーリーが判んなくなってんだ。ジャケット見てそそられるものでも、実際見てみたら男優がキモすぎて萎えるタイトルは多い。だいたい俺は、若い女の子にオヤジを充てるシュチエーションがあまりすきではない。だから女子高生×中年教師だなんてもっての外だ。なんだか、あまりにも女の子とのビジュアル的落差が激しすぎると、気の毒になってヌけない。アダルトビデオにアイある展開なんて求めてないんだけど、泣いてる女の子見るよりは感じている切ない表情を見るほうが興奮するってだけの話。征服感はあって欲しいんだけど、泣かせたくは無いっていう、この矛盾。なんとも絶妙なバランスなんだな、これが。
そんなことを考えてたら、授業が終わった。
「岩原、今日は昼飯、教習所の裏の来来軒行こうぜ」
さっきまで爆睡してた癖にけろりとした顔をした青木が振り返る。俺は顔が引きつっているのが自分でも判った。
「いい。」
「何でよ。今日はそのつもりで弁当買って来なかったじゃん」
「いいから先行っててくれ」
席に座ったまま、睨むように青木を見上げる。ヤツは暫く黙っていたが、静かに背広を持って立ち上がった。
「……ま、なるべく早く来いや。昼休み、短いし」
事情を察した青木はひとりで教室を後にした。隣の野郎は鞄から弁当を出して水筒のコップにお茶を注いでいる。俺は極寒の季節にフンドシ一丁で滝壺に飛び込む妄想をして、何とか股間の膨らみを沈めようとした。
*----------------------------*
本当にこれがオトメ小説なんでしょうか・・・。
いや、そうなんですよ!!!(汗)
サワムラ的オトメな男子のポイントは、性癖はノーマルで健全な性欲がある二十代の青年ってとこ。AV女優に求めるビジュアルと、実際傍にいたい女性のイメージが、被っているところ(小柄)と全然違うところ(巨乳・アイドル顔・年下系)とがあるところに焦点を当ててみました。って誰も気付かねぇか。
ってか、1話で風俗、3話でアダルトチャンネル(妄想)って。一見ただのエロまんが風ですね・・・。この調子だと5話辺りで生身の女の子でも登場しそう。ですが、イワハラくんは奥手な小心者なんで、そんな人生は歩めないでしょう。(本当に?)
これ、70%は訓練出張中の同僚の出来事です。同僚H・M・D・Tたち四人のエピソードを織り交ぜて見ました。
お前ら、講義中にどうやったら勃起できんだ?と非常に不思議に思った出来事。多分、こんな感じかな、と。
意外と皆さん、妄想力豊かなんですね。(それともただ飢えてるだけなのか?)
てゆうか、お前らと出張中行動を供にしなきゃなんないあたしは、こんな会話ばっか連日聞かされて気まずいんですけど!!!(笑)
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久しぶりに遠足前の子供のようにわくわくした。仕事の一環だけど、出勤する場所はいつもと全然違う場所と土地。オマケに、寝泊りするのはシティホテル。そして頭も体力もたいして使うことの無い一週間。この条件を聞いて、喜ばずにいられるか。否、無理でしょう。
「課長、あのバカふたりを一緒に行かせて大丈夫なんですか」
なんて纐纈さんに囁かれてしまったけど、そう云われるのも致し方ない。と我ながら思った。
安全衛生講習受講のための、訓練出張六日間。近場でやっていないため同期の青木とふたり、特急列車に乗って他県へと男ふたり旅だ。普段身に付けることのないスーツに袖を通し、ホテルから教習所までの朝の通勤電車に揺られるのもたまになら悪くない。ってかむしろ新鮮だ。この、満員電車に揉まれている感じ。憧れたことは無かったけど、朝の通勤ラッシュ。これぞまさに働いてるって感じ。俺ってサラリーマンじゃん。と無意味にテンションも上がる。いつもは作業着のまんま独身寮から会社まで単車に乗って出勤している身分なもんで、通勤ラッシュとも渋滞とも無縁だから尚更だ。
「岩原、昨日晩飯の後何してたん、」
青木とは毎朝、ホテルのロビーで待ち合わせして駅に向かった。もう三日目。電車の時間も覚えて余裕の出た俺たちは、一本遅らせても遅刻にはならないことを確認してまったりと歩く。
「特に。パチ行って、調子悪かったから結構すぐ帰って、部屋で映画観てた」
「あー、あれ、同じのずっとリピートしてんじゃん。俺見飽きたわ」
「でも観てんでしょ。なんか何回も観てると、笑えてこねぇ、」
「来る来る。『君のために、俺はこの命を捨てる覚悟だ』って云って飛び込むシーン。一回目は感動したのに、五回目になるとなんか笑えるよな」
「五回は観すぎだろ、どんだけ暇なんだよ」
ビジネスホテルの無料映画チャンネルは一週間同じタイトルを永遠と流していた。ちょうど宿泊期間中にタイトルが変わる日程になっていなかったため、今日も明日も明後日も、同じ映画しか見ることができない。
「五百円払えばアダルトチャンネル見れるじゃん」
「知ってる。でもあれ、古いやつしかなさそうじゃね、」
「そーでもないぜ、昨日はよしだ桃花のぶち抜き三時間やってたし」
「マジっ、それを早く云えよ。今晩見よっと」
「かおりじゅんこの出会って五秒シリーズもあったし」
「あれはいーや。五秒どころか五分経っても挿入しねぇじゃん」
なんて実に下らない会話をしながら改札を抜ける。出張なんてそんな頻繁にあるもんじゃない。いつもの自分の家を離れることは新鮮だけど、自分の家じゃないからホテルの部屋に戻ってもやることがない。だから自然と頭はパチンコとテレビとエロにシフトする。
「あのお部屋でマッサージサービスって、かわいいおねぇちゃん来ねぇのかなぁ」
「オバサンだったわ、掃除婦風の」
「もう試したのかよ、何期待してんだよ」
「だってマジ肩凝ったんだって、普段机に向かって授業聴くことなんてねぇからさぁ」
「それは確かに」
講習という名の知らないオッサンのお喋りは、学生時代の退屈な授業と大差無い。退屈すぎて講義中の半分は上の空で、まったく関係のない空想ばかりしている。教室には男性ばかりが二十名程度。隣り合った席を避け、疎らに座っている。俺たちみたいにスーツ姿の人間もいれば、自社の作業着らしき服装の者もいる。きっとまぁ、大体同じ様な職業の人間ばかりなんだろう。年齢層は割りとバラけている気もするが、全くもって女性がいない。どんな場所に行っても、とことん女性に縁のない人生なんだなと思い知らされる。古びた専門学校の校舎のような建物は、高年齢層の生徒ばかりの所為か覇気も活気もなく、心成しか照明まで暗い気がした。
「えー。では、昨日の続きですね。テキストの六十ページを開いてください」
耳慣れたようなセリフを教壇に立つオッサンが云った。あのオッサンは、いつからこんな仕事をしているのだろう。こんな、職場から強制参加させられているヤル気のない中年男ばかりを前にして、年中教鞭を振るう仕事をするって、実際どんな心境なんだろう。病んできたりしないだろうか。俺だったら、三日も持たない気がする。同じ無口なモノを相手にする仕事でも、車のエンジンいじってる方が数百倍楽しいだろうに。もしこれが、こんな寂れたビルの一角ではなく、高校だったなら。あのオッサンの抑揚のない喋りもいくらかマシな声音になるのだろうか。教室がもっと明るくって、そんでもって作業着のまま授業を受けるような工業高校でなくって、普通科の共学だったとしたら。普通科の、共学だったとしたら。
そこにはきっと、女子高生がいる。俺の青春には登場しなかった、華の女子高生が。そう、今朝も通勤電車の中で、制服姿の女の子を何人か見かけた。制服姿の女の子なんて日常生活ではまったく関わってこない存在だったから、朝から焦ってしまった。俺はほぼ男子校と云っても過言ではない工業高校の電気科出身で、家から二十分のチャリ通学で、女子高生とは無縁すぎる十代を過ごした。制服姿の女の子といえば、アダルトビデオという図式が脳内に成り立ってしまっている。我ながら、貧困すぎる発想。部活に文化祭に体育祭、共に汗を流して笑いあった思い出。そんなものが全くない。何だか、すげぇ損してる気がしてきた。あぁ、人生、もう一回やり直したい。
意気消沈して斜め向かいの青木に目をやると、ヤツは船を漕いでいた。ゆらゆらと頭が小さく揺れる。どうせ昨日、一晩中アダルトチャンネルを見てたんだろう。そうでなくっても、この授業は退屈だった。周りを見渡すと、寝ている人間も結構いる。一応、単位毎に試験はあるが、逐一マジメに聞いていなくても普段の業務内容のおさらいみたいなもんだったから、ある程度答えることは出来る。欠点を取る可能性は、まず無い。
今夜は何して時間潰そうか。ホテルの向かいにあるすき家に行って、シャワー浴びたら青木の云ってたアダルトチャンネルでも物色しようかな。よしだ桃花のぶち抜き三時間は俺も見たい。小柄で、でもEカップ巨乳のベビーフェイス。黒目がちのぱっちり二重の彼女が上目遣いに見上げるカメラ目線に、わざとだと判っていてもぐっとくる。そうだ、よしだ桃花といえば、女子高生モノが多かったはずだ。小柄で童顔の女優となれば、必ずついてくるレパートリー。こんな感じの薄暗い教室で、何故かヒロインの女優以外はみんな男子生徒ばかりっていうAVならではのシュチエーションのヤツを見た気がする。確か、最初は不良に目を付けられて、放課後軽く痴漢行為をされるんだっけか。女優は童顔だけど、男優が明らかに老け顔なのに学ラン着ているところが不自然なんだけど、それはまぁしょうがない。そんでもって、不良の痴漢に耐えかねた桃花が担任のオッサン教師に相談。そしたら何故かそのオッサン教師に保健室で犯されてしまうっていう筋書きだったような。しかも後日には何故か教師も不良も一般生徒も入り乱れての輪姦状態。って、何でこんな展開になったんだっけか。理解不能だ。そもそも、アダルトビデオにストーリー性なんて求めてないんだから、ヌける場面が随所に散りばめられていればそれでオッケーなんだけど。なんかあの時の男優、このオッサンに似てないか。こういういかにもな七三分けで、タータンチェックのセーターを着て、赤いネクタイ締めてた辺りが。そうだ、オッサン教師に犯されるシーンが煩わしくって、早送りしたからストーリーが判んなくなってんだ。ジャケット見てそそられるものでも、実際見てみたら男優がキモすぎて萎えるタイトルは多い。だいたい俺は、若い女の子にオヤジを充てるシュチエーションがあまりすきではない。だから女子高生×中年教師だなんてもっての外だ。なんだか、あまりにも女の子とのビジュアル的落差が激しすぎると、気の毒になってヌけない。アダルトビデオにアイある展開なんて求めてないんだけど、泣いてる女の子見るよりは感じている切ない表情を見るほうが興奮するってだけの話。征服感はあって欲しいんだけど、泣かせたくは無いっていう、この矛盾。なんとも絶妙なバランスなんだな、これが。
そんなことを考えてたら、授業が終わった。
「岩原、今日は昼飯、教習所の裏の来来軒行こうぜ」
さっきまで爆睡してた癖にけろりとした顔をした青木が振り返る。俺は顔が引きつっているのが自分でも判った。
「いい。」
「何でよ。今日はそのつもりで弁当買って来なかったじゃん」
「いいから先行っててくれ」
席に座ったまま、睨むように青木を見上げる。ヤツは暫く黙っていたが、静かに背広を持って立ち上がった。
「……ま、なるべく早く来いや。昼休み、短いし」
事情を察した青木はひとりで教室を後にした。隣の野郎は鞄から弁当を出して水筒のコップにお茶を注いでいる。俺は極寒の季節にフンドシ一丁で滝壺に飛び込む妄想をして、何とか股間の膨らみを沈めようとした。
*----------------------------*
本当にこれがオトメ小説なんでしょうか・・・。
いや、そうなんですよ!!!(汗)
サワムラ的オトメな男子のポイントは、性癖はノーマルで健全な性欲がある二十代の青年ってとこ。AV女優に求めるビジュアルと、実際傍にいたい女性のイメージが、被っているところ(小柄)と全然違うところ(巨乳・アイドル顔・年下系)とがあるところに焦点を当ててみました。って誰も気付かねぇか。
ってか、1話で風俗、3話でアダルトチャンネル(妄想)って。一見ただのエロまんが風ですね・・・。この調子だと5話辺りで生身の女の子でも登場しそう。ですが、イワハラくんは奥手な小心者なんで、そんな人生は歩めないでしょう。(本当に?)
これ、70%は訓練出張中の同僚の出来事です。同僚H・M・D・Tたち四人のエピソードを織り交ぜて見ました。
お前ら、講義中にどうやったら勃起できんだ?と非常に不思議に思った出来事。多分、こんな感じかな、と。
意外と皆さん、妄想力豊かなんですね。(それともただ飢えてるだけなのか?)
てゆうか、お前らと出張中行動を供にしなきゃなんないあたしは、こんな会話ばっか連日聞かされて気まずいんですけど!!!(笑)
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2012/04/04/Wed
ひとを誘うのが案外苦手です。
一部の凄く親しいひとを除いて、何日も、酷いときには1ヶ月くらい、誘いたくても誘えずに悶々としています。
誰とでもすぐ親しくなるし、誰とでも飲み会を開いているくせに、嘘だろ?!と思われそうですが、実は凄く、悩んで、悩みまくって、連絡しているんですよね。
そのことを、今日、たまたま電話をくれたイチ先輩に打ち明けたらあっさりと
「お前、おかしいよ」
と言われちゃいました。
ふつーに誘えよ。何意識してんだ?
と。
でも、約10年前のトラウマも手伝って、凄くいろいろ考えてしまうんですよね。
迷惑にならないように、彼女さんの勘違いや嫉妬を招いたりしないように、相手の勤務が楽なところを調べたりしないと誘えない。
でもそれを調べるのにも気力と勇気がいるから、中々進まない。
で、イチさんを以前お誘いしてから、2年の歳月が経ってしまいました。(爆)
……しかし、これはメール限定の話です。
私は、メールが極度に苦手なワケであって、電話や直接会って喋れば、何でもズバズバと言えちゃう人間なのです。
物書き業務やってるくせに、自分でもおかしな子だと思います。
故に、ごちゃごちゃ考えずに、「今から行ける?」っていう、突然かつ横暴な誘いに乗ってくれるタイプの人としか人付き合いが上手くいかないんですよね。
そう、近所で出会ったひとつ下の男の子や、後輩のミケくんなんかがそうです。
彼らが居てくれるから、仲間との糸口が繋がっていられるのかも知れません。
大事にしていかないと行けないな、と思います。
一部の凄く親しいひとを除いて、何日も、酷いときには1ヶ月くらい、誘いたくても誘えずに悶々としています。
誰とでもすぐ親しくなるし、誰とでも飲み会を開いているくせに、嘘だろ?!と思われそうですが、実は凄く、悩んで、悩みまくって、連絡しているんですよね。
そのことを、今日、たまたま電話をくれたイチ先輩に打ち明けたらあっさりと
「お前、おかしいよ」
と言われちゃいました。
ふつーに誘えよ。何意識してんだ?
と。
でも、約10年前のトラウマも手伝って、凄くいろいろ考えてしまうんですよね。
迷惑にならないように、彼女さんの勘違いや嫉妬を招いたりしないように、相手の勤務が楽なところを調べたりしないと誘えない。
でもそれを調べるのにも気力と勇気がいるから、中々進まない。
で、イチさんを以前お誘いしてから、2年の歳月が経ってしまいました。(爆)
……しかし、これはメール限定の話です。
私は、メールが極度に苦手なワケであって、電話や直接会って喋れば、何でもズバズバと言えちゃう人間なのです。
物書き業務やってるくせに、自分でもおかしな子だと思います。
故に、ごちゃごちゃ考えずに、「今から行ける?」っていう、突然かつ横暴な誘いに乗ってくれるタイプの人としか人付き合いが上手くいかないんですよね。
そう、近所で出会ったひとつ下の男の子や、後輩のミケくんなんかがそうです。
彼らが居てくれるから、仲間との糸口が繋がっていられるのかも知れません。
大事にしていかないと行けないな、と思います。
2012/04/03/Tue
自称・オトメ小説第二話。
最近は物書きに迫られている生活ですので、息抜きにこういった駄文を書きたくなるのです。(笑)
というのは、初夏に公演するかもしんない舞台の脚本を書いています。
脚本は会話で進むもんですが、小説形態にすると急に堅苦しい表現になるのがワタシのいけないところ。
過去に書いていた、高校生の少年の一人称で進むネット小説「本日も、晴天なり」みたいに軽快でアップテンポなノリに直したくて、今回試行錯誤しているのが窺えますよ。
少しでも直っていればいいなー。
*----------------------------*
荒れた畑の畦道の先に、ウチの板金場はあった。舗装された県道からちょっと乗り出したところに斜めになった軽トラが停まっている。雑草を無造作に踏み付けながら獣道を十メーター程歩くと、急に視界が開ける。目下に広がるのはエンドウ畑。その手前にある敷地には、傍から見たら不法投棄の廃材置き場にしか見えないガラクタがいつも転がっていた。バイクのフェンダーにスプリング、トラックのタイヤに軽自動車のエンジン、それに、ドラム缶がいくつか。その右手にあるのが、申し訳程度のプレハブ小屋のような建物。半分壊れたようなシャッターは全開。中では、インディゴ・ブルー色したツナギの作業着を着た小柄な塗装士が、取り外した普通車のドアにスプレーガンで塗料を吹き付けていた。
「纐纈さん、クラウンの納品書、出来ましたよ」
入り口から少し声を張り上げる。塗装士は一通り塗り終わると、頭からすっぽり被った面を半分だけ上げて振り返った。
「ほんじゃあ休憩がてら、伊佐治さんとこ行こっか」
了解っス、と答えて俺は板金場のシャッターを閉めにかかった。二枚とも締め終わると、作業着の上からジャンバーを羽織った纐纈さんが鍵を持ってきて、シャッターと勝手口を施錠する。
「今日中に揃いそうなやつ、」
「全然いけますよ。スタンダードなボルトとナットとエアフィルターくらいですから」
路肩に斜めに停めていた軽トラに乗り込む。助手席には俺、纐纈さんは太い黄色のフレームの眼鏡を掛けるとギアを一速に入れ、ハンドルを握ってクラッチペダルを踏んだ。
伊佐治商会は板金場から一キロ圏内の町中にあった。銀行と消防署の裏手にある年季の入った三階建てのビルで、一階にある小さな事務所以外は建物全部が部品庫になっている車のパーツ屋さん。軽トラを駐車場に入れて、纐纈さんは早足で事務所に向かった。俺も彼女に続いて事務所に入ると、入り口から一番近い席に座る事務員の女性がカウンターまで出てきてくれる。
「MMPさん、いつもお世話になっています」
透き通るような声で彼女は云って、グラビアアイドルのような完璧な笑顔でこちらに向かってにっこりと微笑む。いつものことだ。
「この五点お願いしたいんだけど、今出して貰える、」
纐纈さんが納品書を提示する。在庫の方お調べしますね、と云って彼女は脇にあるパソコンにデータを打ち込み始めた。透き通るような白い肌。丁寧に手入れされた長い指先に、爪。そしてウェーブの掛かった長い髪は、淡い栗色。その髪がキーボードに向かって俯いた拍子に顔に掛かり、右手の人差し指で耳に掛ける。俯き加減になった横顔からは、長い睫が瞬きと共に上下して、思わずその様子に見入ってしまう。
伊佐治商会に勤める派遣事務員の粗志扶実。年は多分、俺と同じくらい。小さな事務所の紅一点で、文字通り職場のマドンナだ。職場の、と云っても同じ会社ではないのだけれど、ウチの会社には事務員のおねぇちゃんなんて人は雇っていなくて、事務処理もすべて自分たちでやっているもんだから、こういった、作業着を着ていない職場の華になるような存在は、日常業務で出会う人物ではこの人しかいない。
つまり俺が日常生活の中で接触する女性はふたりだけ。ひとり目が纐纈さん。身長百五十五センチ程度しかない小柄な体躯なのに車のエンジンやフレームを難なく持ち運びする力持ちで、年中すっぴんに作業着のまま単車に跨り出勤してくるという色気のカケラも感じさせない無愛想な同僚。そしてふたり目が粗志さん。ファッション雑誌から飛び出したかのような完璧なメイクに百七十センチ近くある長身なのに華奢さすら感じさせる細身のスタイルを保ち、お人形さんと形容されるに相応しい声と屈託のない笑顔で対応してくれるという取引先の事務員。
この極端に対照的なふたりの女性に接する自分の態度も、同じくらい極端に対照的になっているのが判っていた。正直俺は、女の人が苦手だ。だから、きれいでかわいい女の子を見ると余計にどう対応していいのか、何を喋っていいのか判らなくなる。
「大丈夫みたいですね、三階の倉庫にすべて揃っていますよ。そちらのソファーにお掛けになって待っていてください」
パソコンの画面から顔を上げた粗志さんは、纐纈さんと俺に向かって笑顔で云うとカウンターから出て入り口手前にある階段へ向かった。それを見た纐纈さんが、慌てて身を乗り出す。
「あ、いいよ、粗志さん。そんな重いもの持って来なくても、ウチの若いのに持たせるから」
云って、俺の腹を肘で思いっきりド突いた。声が漏れそうになる。痛い。どうやら鳩尾に入ったらしく、正直、本当に、痛い。なるべく平常心を保ったつもりで横目に見ると、纐纈さんはしかめっ面で俺を見上げて、早く行けよ、と云っていた。
「だからお前は女にモテないんだよ、素人童貞が」
と小声で悪態を吐かれる。
「なッ…」
んで、いま、ドーテーとか云うんですか。こんな、マドンナのいる目の前で。ワザとですか。ワザとでしょう、アンタ。童貞かどうかなんて、この状況では全くもって関係無い。しかも厳密に言うと俺、シロートドーテーではないんですけどっ。
なんて反論が一瞬にして頭の中をぐるぐると廻った。が、反論するほどでもなかった。どっちでも似たような経験回数だって、思い当たったから。つまり、女性の扱いに、対応に、慣れていないと云われたんだ、今のは。返す言葉も無い。実際その通りだ。普段、どんな重たい物でも難なく運んでいる纐纈さんを見慣れてしまっている所為で、一般女性が非力でか弱い存在だという認識を忘れてしまっていたんだ。
結局俺は纐纈さんの言葉に反論出来ないまま、粗志さんを追い掛けて階段を上った。
「すみません、こちらの仕事ですのに、手伝って貰っちゃって」
粗志さんと並んで歩く。揺れる髪から、女の人の匂いが不意に鼻をつく。目線の位置は、俺と殆ど変わらない気がした。ヒールの高さもあるのだろうけど。俺が百七十三、四センチだから、彼女も百七十近くあるのかも知れない。
「いえいえ、力ぐらいしか脳が無いですからね、俺たちは。どんどん使ってやってください」
きっかけがあると、言葉がついてくる。自分から切り出すことは出来ないけれど、相手から話題を振られれば、漫才のツッコミの要領で返すことは可能だ。そういう風に、出来ているらしい。
粗志さんはくすっと笑った。
「面白いこと云う方だったんですね、岩原さんって」
「面白いですか、」
「ハイ。だっていつも、事務的なやり取りをするか、纐纈さんに付いて来て黙って後ろで待っている方、っていう印象だったので」
「はぁ……なるほど」
確かに、今まで彼女とこうしてふたりきりになったことは無い。だから会話も基本的にしたことが無かったみたいだ。云われてみて初めて気付いた。
「こちらの棚ですね、ちょっと待っててください」
倉庫は薄明かり。高く幾重にも立ち並んだ棚の所為で、蛍光灯の光りが上手く部屋全体に行き渡っていない。粗志さんの背中は少しぼんやりと映る。棚のラベルを見ながら、該当部品のナンバーを探して上下に揺れる彼女の背中。
倉庫にはふたりっきり。もし今ここで、何かのアクシデントが起きれば。俺は粗志さんと、粗志さんに、触れることが出来たりするのかもしんない。例えば彼女があの棚の一番上の段に手を伸ばして、あのダンボールが崩れてきたりしたら。後ろにいる俺が受け止めるのは自然な流れですよね。もし万が一、彼女の身体に触ってしまっても、それは不可抗力ってヤツですよね。でもって、痴漢ッ、だなんて騒がれるどころか、感謝すらされちゃったりして。
「こちらが小部品の方ですね」
「あ、どうも」
妄想は終わった。箱は小さかったし、棚の一番上でも粗志さんは難なく手を伸ばして抜き取っている。もしこれが纐纈さんだったら、多分届かないんだろうな。んでもって俺に「取って(ハート)」なんてことになったのかも知んない。
いや。実際の彼女なら「岩原、あれ、持って行きな」って顎で指して終わりか。
「あとキャブレータがこちらなんですけど」
「あ、それはジブンが持ちますっ」
慌てて前へ出る。荷物持ち要員として派遣された身なんですから、役立たずのままでは終われない。ひとつなら大した重さじゃないけど、箱で入ってればそれなりの重量になっているはずだ。
「助かります。私、上段にあるあの辺の部品出すの、苦手で。こういう時、男の人がいると頼もしいですね」
俺が降ろした段ボール箱を取り分けながら、粗志さんはこちらを見上げて照れたように微笑んだ。これって、社交辞令なんだろうか。それとも、本心。この重さの部品を動かすことが、本当に彼女にとって重労働になるのかどうかが俺には判らない。多分、纐纈さんだったら難なく動かせそうなもんだし、俺自身も重いとは感じないから。
粗志さんは、体型は痩せすぎなんじゃないかと思うほど細い。だから身長の割にデカイ印象は無いけど、かといってかわいらしい印象も無かった。それは、俺の偏った基準の所為かも知んない。どうやら俺自身は、力の有無で頼られることよりも、会話の際の目線の位置の方が気になるポイントらしい。身長差の所為でいつも俺を見上げて喋る纐纈さんに対して感じる変な優越感に似た満足心が、彼女に対しては得られなかったから。
伊佐治商会からの帰り道。ちょっと寄り道をして近所のショッピングモールに入った。遅めの昼食を取るために、入り口からすぐのフードコートに立ち寄る。纐纈さんはこんなときのために、会社のロゴが入っていない薄手のジャンパーを羽織るが、正直あんまり意味はないと思う。だって横に、作業着姿丸出しの俺がいるんだから。
「やっぱりさぁ、職場にはあーゆー潤いが必要だね」
「何の話スか、」
フードコートにあるカツ丼屋のテーブルに向かい合って座った纐纈さんが、嬉々として云った。俺は大盛りを注文したけど、纐纈さんは相変わらずハーフ丼を選んでいる。決してダイエットなどをしているわけではなく、体格も胃も小さいからすぐにお腹が膨れるらしい。実際、俺の大盛りと彼女のハーフで、食べるスピードはバランスが合うくらいだから本当なんだろう。
「アラシさんのことだよ。こう、近付いたらいい匂いしない、」
「あぁ、お部屋の芳香剤みたいな」
あんたオッサンかよ。と思いながら、お茶を啜る。すると彼女は、目に見えて大きな溜め息を吐き捨てた。
「あれはコロンだろ。女の子の匂いってヤツだよっ」
明らかに俺を莫迦にした口調。どうやら、云わなきゃ判って貰えないらしい。
嘘を吐かない。吐けない。っていう自分の信念に基づいて、正直な心境を述べることにする。
「でもジブンはあーゆう化粧臭い匂いって苦手ですねぇ。どっちかっていうと、」
纐纈さんみたいな、と云いかけて慌てて口を噤む。
「どっちかっていうと、何だよ」
不思議そうな目をして纐纈さんが丼から顔を上げた。まるで、世の中の男はみんな粗志さんみたいなモデルタイプの女性が好きなんだろうということを信じて疑わないような、そんな目。
ちょっと、意地悪をしてやりたくなった。
世の中の女性ぜんぶに対する固定観念を少し壊してやりたいような、そんな気分。確かに粗志さんはキレイだ。纐纈さんが云うように、男ばかりで塗料や脂臭い異臭の漂う乾いた職場に華を添える存在であることも事実だろう。けど、彼女みたいな美人に実際憧れるかと問われれば、多分違う。目の保養にはなるし、並んで歩けば周囲の野郎どもに羨望の眼差しを向けられ優越感に浸れるだろうけれど、近くに居たいと感じるタイプとはまた違うのだ。
美人は三日で飽きて、不美人は月日と共に愛嬌に変わる。それが人間の心理ってやつ。だって実際、初めて会った時の纐纈さんは女の子という印象なんて皆無だったし、正直云うと残念なタイプだと思った。世の中の女性がみんなそれなりに綺麗に見えているのは化粧マジックであって、化けの皮を剥がすと実際はこんな感じになるんだろうか、と疑うほどガッカリしたもんだ。
けど、今はそこらを歩いている女性陣より彼女の方が愛嬌や親しみがあってかわいいと思えてしまっているのだから、不思議なもんだ。だって、纐纈さんの表情には偽りが無い。いつだって本音が見える。愛想笑いなんて俺にするわけないし、化粧で素顔を隠しているわけでもない。嘘偽りが絶対無いと判っている彼女の笑顔は本物で、それを見られた日には少し仕合わせな気分に浸れるのだ。
「俺は香水より、石鹸の香りがする女性の方がすきです」
いつかの、居酒屋のカウンターに並んで座ったときのことを思い出して云った。何だかんだ云って今は纐纈さんのような女性といる方がラクで落ち着く。石鹸の香りというのは、そういう自然体でナチュラルであることの象徴のような気がした。
纐纈さんの箸を持つ手が止まっていた。丼をテーブルに置いたまま、じっと正面に座る俺を見ている。そして、彼女はゆっくりと口を開いた。
「ビョーキだよ、お前。中学生か」
一瞬にして突き落とされた。纐纈さんの表情には偽りが無い。いつだって本音が。
でもその本音が、コレですか。俺は、あなたのことを云ったんですよ、纐纈さん。
*----------------------------*
職場のマドンナ・アラシフミさん登場。
私の職場にも派遣事務員の長身ですらりとした女性がいます。
女の人から見ればステキな彼女も、微妙に身長にコンプレックスのある岩原くんから見れば小さい女性のほうが気に入ったりして。
不美人も三日経てば愛嬌に変わるのか?
それもホントウのことみたいですよ(笑)
以前、職場で女の子の話題で盛り上がっていた男性陣の会話を盗み(?)聞きした際に知った事実。(一部の男性だけかも知れませんが・・・)
三日は嘘にしても、一年前はイマイチ評価だったはずの女の子が、性格と笑顔が判った一年後には何故か陰のアイドル扱いまで昇格していたもんで、驚きです。
男の子たちからそんな話を聞いた日にゃ、希望が持てますね(←激しく勘違い!笑)
ってか今更だけど、1話の風俗嬢といい、このタイトルといい、「昭和臭さ」が漂っていると感じるのは私だけでしょうか?
最近は物書きに迫られている生活ですので、息抜きにこういった駄文を書きたくなるのです。(笑)
というのは、初夏に公演するかもしんない舞台の脚本を書いています。
脚本は会話で進むもんですが、小説形態にすると急に堅苦しい表現になるのがワタシのいけないところ。
過去に書いていた、高校生の少年の一人称で進むネット小説「本日も、晴天なり」みたいに軽快でアップテンポなノリに直したくて、今回試行錯誤しているのが窺えますよ。
少しでも直っていればいいなー。
*----------------------------*
荒れた畑の畦道の先に、ウチの板金場はあった。舗装された県道からちょっと乗り出したところに斜めになった軽トラが停まっている。雑草を無造作に踏み付けながら獣道を十メーター程歩くと、急に視界が開ける。目下に広がるのはエンドウ畑。その手前にある敷地には、傍から見たら不法投棄の廃材置き場にしか見えないガラクタがいつも転がっていた。バイクのフェンダーにスプリング、トラックのタイヤに軽自動車のエンジン、それに、ドラム缶がいくつか。その右手にあるのが、申し訳程度のプレハブ小屋のような建物。半分壊れたようなシャッターは全開。中では、インディゴ・ブルー色したツナギの作業着を着た小柄な塗装士が、取り外した普通車のドアにスプレーガンで塗料を吹き付けていた。
「纐纈さん、クラウンの納品書、出来ましたよ」
入り口から少し声を張り上げる。塗装士は一通り塗り終わると、頭からすっぽり被った面を半分だけ上げて振り返った。
「ほんじゃあ休憩がてら、伊佐治さんとこ行こっか」
了解っス、と答えて俺は板金場のシャッターを閉めにかかった。二枚とも締め終わると、作業着の上からジャンバーを羽織った纐纈さんが鍵を持ってきて、シャッターと勝手口を施錠する。
「今日中に揃いそうなやつ、」
「全然いけますよ。スタンダードなボルトとナットとエアフィルターくらいですから」
路肩に斜めに停めていた軽トラに乗り込む。助手席には俺、纐纈さんは太い黄色のフレームの眼鏡を掛けるとギアを一速に入れ、ハンドルを握ってクラッチペダルを踏んだ。
伊佐治商会は板金場から一キロ圏内の町中にあった。銀行と消防署の裏手にある年季の入った三階建てのビルで、一階にある小さな事務所以外は建物全部が部品庫になっている車のパーツ屋さん。軽トラを駐車場に入れて、纐纈さんは早足で事務所に向かった。俺も彼女に続いて事務所に入ると、入り口から一番近い席に座る事務員の女性がカウンターまで出てきてくれる。
「MMPさん、いつもお世話になっています」
透き通るような声で彼女は云って、グラビアアイドルのような完璧な笑顔でこちらに向かってにっこりと微笑む。いつものことだ。
「この五点お願いしたいんだけど、今出して貰える、」
纐纈さんが納品書を提示する。在庫の方お調べしますね、と云って彼女は脇にあるパソコンにデータを打ち込み始めた。透き通るような白い肌。丁寧に手入れされた長い指先に、爪。そしてウェーブの掛かった長い髪は、淡い栗色。その髪がキーボードに向かって俯いた拍子に顔に掛かり、右手の人差し指で耳に掛ける。俯き加減になった横顔からは、長い睫が瞬きと共に上下して、思わずその様子に見入ってしまう。
伊佐治商会に勤める派遣事務員の粗志扶実。年は多分、俺と同じくらい。小さな事務所の紅一点で、文字通り職場のマドンナだ。職場の、と云っても同じ会社ではないのだけれど、ウチの会社には事務員のおねぇちゃんなんて人は雇っていなくて、事務処理もすべて自分たちでやっているもんだから、こういった、作業着を着ていない職場の華になるような存在は、日常業務で出会う人物ではこの人しかいない。
つまり俺が日常生活の中で接触する女性はふたりだけ。ひとり目が纐纈さん。身長百五十五センチ程度しかない小柄な体躯なのに車のエンジンやフレームを難なく持ち運びする力持ちで、年中すっぴんに作業着のまま単車に跨り出勤してくるという色気のカケラも感じさせない無愛想な同僚。そしてふたり目が粗志さん。ファッション雑誌から飛び出したかのような完璧なメイクに百七十センチ近くある長身なのに華奢さすら感じさせる細身のスタイルを保ち、お人形さんと形容されるに相応しい声と屈託のない笑顔で対応してくれるという取引先の事務員。
この極端に対照的なふたりの女性に接する自分の態度も、同じくらい極端に対照的になっているのが判っていた。正直俺は、女の人が苦手だ。だから、きれいでかわいい女の子を見ると余計にどう対応していいのか、何を喋っていいのか判らなくなる。
「大丈夫みたいですね、三階の倉庫にすべて揃っていますよ。そちらのソファーにお掛けになって待っていてください」
パソコンの画面から顔を上げた粗志さんは、纐纈さんと俺に向かって笑顔で云うとカウンターから出て入り口手前にある階段へ向かった。それを見た纐纈さんが、慌てて身を乗り出す。
「あ、いいよ、粗志さん。そんな重いもの持って来なくても、ウチの若いのに持たせるから」
云って、俺の腹を肘で思いっきりド突いた。声が漏れそうになる。痛い。どうやら鳩尾に入ったらしく、正直、本当に、痛い。なるべく平常心を保ったつもりで横目に見ると、纐纈さんはしかめっ面で俺を見上げて、早く行けよ、と云っていた。
「だからお前は女にモテないんだよ、素人童貞が」
と小声で悪態を吐かれる。
「なッ…」
んで、いま、ドーテーとか云うんですか。こんな、マドンナのいる目の前で。ワザとですか。ワザとでしょう、アンタ。童貞かどうかなんて、この状況では全くもって関係無い。しかも厳密に言うと俺、シロートドーテーではないんですけどっ。
なんて反論が一瞬にして頭の中をぐるぐると廻った。が、反論するほどでもなかった。どっちでも似たような経験回数だって、思い当たったから。つまり、女性の扱いに、対応に、慣れていないと云われたんだ、今のは。返す言葉も無い。実際その通りだ。普段、どんな重たい物でも難なく運んでいる纐纈さんを見慣れてしまっている所為で、一般女性が非力でか弱い存在だという認識を忘れてしまっていたんだ。
結局俺は纐纈さんの言葉に反論出来ないまま、粗志さんを追い掛けて階段を上った。
「すみません、こちらの仕事ですのに、手伝って貰っちゃって」
粗志さんと並んで歩く。揺れる髪から、女の人の匂いが不意に鼻をつく。目線の位置は、俺と殆ど変わらない気がした。ヒールの高さもあるのだろうけど。俺が百七十三、四センチだから、彼女も百七十近くあるのかも知れない。
「いえいえ、力ぐらいしか脳が無いですからね、俺たちは。どんどん使ってやってください」
きっかけがあると、言葉がついてくる。自分から切り出すことは出来ないけれど、相手から話題を振られれば、漫才のツッコミの要領で返すことは可能だ。そういう風に、出来ているらしい。
粗志さんはくすっと笑った。
「面白いこと云う方だったんですね、岩原さんって」
「面白いですか、」
「ハイ。だっていつも、事務的なやり取りをするか、纐纈さんに付いて来て黙って後ろで待っている方、っていう印象だったので」
「はぁ……なるほど」
確かに、今まで彼女とこうしてふたりきりになったことは無い。だから会話も基本的にしたことが無かったみたいだ。云われてみて初めて気付いた。
「こちらの棚ですね、ちょっと待っててください」
倉庫は薄明かり。高く幾重にも立ち並んだ棚の所為で、蛍光灯の光りが上手く部屋全体に行き渡っていない。粗志さんの背中は少しぼんやりと映る。棚のラベルを見ながら、該当部品のナンバーを探して上下に揺れる彼女の背中。
倉庫にはふたりっきり。もし今ここで、何かのアクシデントが起きれば。俺は粗志さんと、粗志さんに、触れることが出来たりするのかもしんない。例えば彼女があの棚の一番上の段に手を伸ばして、あのダンボールが崩れてきたりしたら。後ろにいる俺が受け止めるのは自然な流れですよね。もし万が一、彼女の身体に触ってしまっても、それは不可抗力ってヤツですよね。でもって、痴漢ッ、だなんて騒がれるどころか、感謝すらされちゃったりして。
「こちらが小部品の方ですね」
「あ、どうも」
妄想は終わった。箱は小さかったし、棚の一番上でも粗志さんは難なく手を伸ばして抜き取っている。もしこれが纐纈さんだったら、多分届かないんだろうな。んでもって俺に「取って(ハート)」なんてことになったのかも知んない。
いや。実際の彼女なら「岩原、あれ、持って行きな」って顎で指して終わりか。
「あとキャブレータがこちらなんですけど」
「あ、それはジブンが持ちますっ」
慌てて前へ出る。荷物持ち要員として派遣された身なんですから、役立たずのままでは終われない。ひとつなら大した重さじゃないけど、箱で入ってればそれなりの重量になっているはずだ。
「助かります。私、上段にあるあの辺の部品出すの、苦手で。こういう時、男の人がいると頼もしいですね」
俺が降ろした段ボール箱を取り分けながら、粗志さんはこちらを見上げて照れたように微笑んだ。これって、社交辞令なんだろうか。それとも、本心。この重さの部品を動かすことが、本当に彼女にとって重労働になるのかどうかが俺には判らない。多分、纐纈さんだったら難なく動かせそうなもんだし、俺自身も重いとは感じないから。
粗志さんは、体型は痩せすぎなんじゃないかと思うほど細い。だから身長の割にデカイ印象は無いけど、かといってかわいらしい印象も無かった。それは、俺の偏った基準の所為かも知んない。どうやら俺自身は、力の有無で頼られることよりも、会話の際の目線の位置の方が気になるポイントらしい。身長差の所為でいつも俺を見上げて喋る纐纈さんに対して感じる変な優越感に似た満足心が、彼女に対しては得られなかったから。
伊佐治商会からの帰り道。ちょっと寄り道をして近所のショッピングモールに入った。遅めの昼食を取るために、入り口からすぐのフードコートに立ち寄る。纐纈さんはこんなときのために、会社のロゴが入っていない薄手のジャンパーを羽織るが、正直あんまり意味はないと思う。だって横に、作業着姿丸出しの俺がいるんだから。
「やっぱりさぁ、職場にはあーゆー潤いが必要だね」
「何の話スか、」
フードコートにあるカツ丼屋のテーブルに向かい合って座った纐纈さんが、嬉々として云った。俺は大盛りを注文したけど、纐纈さんは相変わらずハーフ丼を選んでいる。決してダイエットなどをしているわけではなく、体格も胃も小さいからすぐにお腹が膨れるらしい。実際、俺の大盛りと彼女のハーフで、食べるスピードはバランスが合うくらいだから本当なんだろう。
「アラシさんのことだよ。こう、近付いたらいい匂いしない、」
「あぁ、お部屋の芳香剤みたいな」
あんたオッサンかよ。と思いながら、お茶を啜る。すると彼女は、目に見えて大きな溜め息を吐き捨てた。
「あれはコロンだろ。女の子の匂いってヤツだよっ」
明らかに俺を莫迦にした口調。どうやら、云わなきゃ判って貰えないらしい。
嘘を吐かない。吐けない。っていう自分の信念に基づいて、正直な心境を述べることにする。
「でもジブンはあーゆう化粧臭い匂いって苦手ですねぇ。どっちかっていうと、」
纐纈さんみたいな、と云いかけて慌てて口を噤む。
「どっちかっていうと、何だよ」
不思議そうな目をして纐纈さんが丼から顔を上げた。まるで、世の中の男はみんな粗志さんみたいなモデルタイプの女性が好きなんだろうということを信じて疑わないような、そんな目。
ちょっと、意地悪をしてやりたくなった。
世の中の女性ぜんぶに対する固定観念を少し壊してやりたいような、そんな気分。確かに粗志さんはキレイだ。纐纈さんが云うように、男ばかりで塗料や脂臭い異臭の漂う乾いた職場に華を添える存在であることも事実だろう。けど、彼女みたいな美人に実際憧れるかと問われれば、多分違う。目の保養にはなるし、並んで歩けば周囲の野郎どもに羨望の眼差しを向けられ優越感に浸れるだろうけれど、近くに居たいと感じるタイプとはまた違うのだ。
美人は三日で飽きて、不美人は月日と共に愛嬌に変わる。それが人間の心理ってやつ。だって実際、初めて会った時の纐纈さんは女の子という印象なんて皆無だったし、正直云うと残念なタイプだと思った。世の中の女性がみんなそれなりに綺麗に見えているのは化粧マジックであって、化けの皮を剥がすと実際はこんな感じになるんだろうか、と疑うほどガッカリしたもんだ。
けど、今はそこらを歩いている女性陣より彼女の方が愛嬌や親しみがあってかわいいと思えてしまっているのだから、不思議なもんだ。だって、纐纈さんの表情には偽りが無い。いつだって本音が見える。愛想笑いなんて俺にするわけないし、化粧で素顔を隠しているわけでもない。嘘偽りが絶対無いと判っている彼女の笑顔は本物で、それを見られた日には少し仕合わせな気分に浸れるのだ。
「俺は香水より、石鹸の香りがする女性の方がすきです」
いつかの、居酒屋のカウンターに並んで座ったときのことを思い出して云った。何だかんだ云って今は纐纈さんのような女性といる方がラクで落ち着く。石鹸の香りというのは、そういう自然体でナチュラルであることの象徴のような気がした。
纐纈さんの箸を持つ手が止まっていた。丼をテーブルに置いたまま、じっと正面に座る俺を見ている。そして、彼女はゆっくりと口を開いた。
「ビョーキだよ、お前。中学生か」
一瞬にして突き落とされた。纐纈さんの表情には偽りが無い。いつだって本音が。
でもその本音が、コレですか。俺は、あなたのことを云ったんですよ、纐纈さん。
*----------------------------*
職場のマドンナ・アラシフミさん登場。
私の職場にも派遣事務員の長身ですらりとした女性がいます。
女の人から見ればステキな彼女も、微妙に身長にコンプレックスのある岩原くんから見れば小さい女性のほうが気に入ったりして。
不美人も三日経てば愛嬌に変わるのか?
それもホントウのことみたいですよ(笑)
以前、職場で女の子の話題で盛り上がっていた男性陣の会話を盗み(?)聞きした際に知った事実。(一部の男性だけかも知れませんが・・・)
三日は嘘にしても、一年前はイマイチ評価だったはずの女の子が、性格と笑顔が判った一年後には何故か陰のアイドル扱いまで昇格していたもんで、驚きです。
男の子たちからそんな話を聞いた日にゃ、希望が持てますね(←激しく勘違い!笑)
ってか今更だけど、1話の風俗嬢といい、このタイトルといい、「昭和臭さ」が漂っていると感じるのは私だけでしょうか?
2012/03/30/Fri
ちょっとイロイロ触発されて、久々に物語を書きたくなりました。
最近、「大人の女性のための少女まんが」ってやつにはまってまして。
そういった雰囲気のある青年漫画(主に恋愛モノ)をBOOK OFFでまとめ買いしてよく読みます。
だからそんな雰囲気を目指したつもり。女性の職場にいないため、オンナゴコロが判らなさ過ぎて女性を主役には据えられませんでしたが、これは「オトメ小説」です!(断言)
*----------------------------*
こういう店に来ることに慣れてしまったのはいつからだろう。
熊沢チーフの送別会という名の宴会でべろべろに酔っ払って、そのままの流れで団体様八名程度でキャバクラに大移動。サービスタイムが終わる一時間の間に店を出てまた新規の客として次の店へと梯子をし、気付いたら熊沢さんはいなくなっていた。残ったのは俺と青木と福本さんの三人。記憶が飛ぶくらい飲んでた割には見た目は平常心を辛うじて保っているように見えたらしい。
個室に案内された部屋で上着を脱ぎながらそんなことを思った。だってこういう店は、泥酔客はお断りだったはずだ。
「はじめまして、アヤです。よろしくお願いしますね」
少し鼻に掛かった声で、淡いピンクのベビードール姿の嬢が言った。壁紙の色は原色がかった黄色。これが興奮を煽る色なのかどうかは定かではないが、自分の部屋には絶対にチョイスしない色であることだけは確かだ。それが、非日常を演出するという意味では効果的なのかもしれない。
「お名前お聞きしてもよろしいですか、」
あと、好みのプレイ内容と。と付け加えられる。
「……岩原昭俊です」
壁に掛かったハンガーを見ながらネクタイを緩める。時間は限られているんだから、さっさとコンディションを整えなければならない。
「やだぁ、それ、本名でしょう、」
嬢は少し笑いながら云った。じゃああたしはなんて呼べばいい、イワハラさん、と甘えた声で聞いてくる。何でもいいっすよ。云いながら、ベルトを外してそれも一緒にハンガーにかけた。
「ジブン、嘘吐くの苦手なんスよ。だから言っちゃいますけど、こういうトコ来るのも久しぶりだし、ぶっちゃけセックスだって何年もご無沙汰です」
アルコールは人を饒舌にする。云いたいことも、云わなくていいことも、心の声も、駄々漏れに垂れ流してしまったりするものだ。嬢は、あら、と口に手を当ててから、うーんと宙を軽く掻き混ぜる。
「じゃあシュチエーションは恋人風、でいいですか、」
そうっスねー、と適当に返事してベッドに腰を掛けた。彼女はすぐ隣に寄り添うように座ってくる。細い太股の付け根で止まったベビードールのフリルの丈が、実に絶妙だ。見えそうで見えない位置でふわりと揺れる。
「本名名乗ってくれたから、あたしもひとつだけ本当のこと、云っちゃおうかな」
どうぞ。と云うと、本当は二十八歳なのよ、アキくん。と彼女が突然妖艶な声音で云ったもんだから、ついうっかり顔を上げてしまった。
視線がぶつかる。
「やっと目、合わせてくれた」
そう云って微笑んだ彼女の顔を見て、どきりとした。当たりだったからか。嬢が、妄想の範疇よりかわいかったからか。否。そうでは無い。
似てる。と思ったからだ。ウチの会社の、纐纈さんに。
「アキくんって、ゼッタイ、あたしより年下だよねぇ」
「プロフ、見たんでしょ。二十五歳って」
「ウン、見たよ。だから、あなたより年下の設定にしたんだけど、さっきのコクハク聞いて、実年齢でいっちゃおーって」
「莫迦にしてンすか、」
「違うよ。お姉さんが何でも教えてあげるって、云いたいの」
そう云って彼女は唇を重ねてきた。首に、腕が廻される。薄いシャツ越しに、たわわな胸が触れた。薄っすらと、舌が入ってくる感触。
「あの、おれ、オプション無しでって…」
追加料金を払う金は残っていないはずだった。ベロチューは頼んでいない。俺はお店で過剰なサービスを追加したいとは思わない。必要最小限のサービスだけで充分だった。女の子の肌に触れることが出来て、運良く相手の子が上手かったり相性が良かったりして、気持ちよく射精出来ればそれで満足だ。
「いーの、黙って。これはサービス」
彼女は離した唇に人差し指を当てて、ウィスパーボイスで答えた。そのまま、肩に廻した手が、腰の辺りまで降りてくる。
「あたし、岩原くんのことすきだなー」
半年前。居酒屋のカウンターで聞いた科白を不意に思い出した。
「本当はね、いつかあなたの恋人になりたいの」
ウイスキーのグラスを傾けながら、蔓延の笑みで云った彼女に、俺は一言も返せなかった。纐纈さんのことは、好きでも嫌いでもなかった。どちらかというと、多分すきな方だった。でも彼女は、俺の答えを期待していないように見えたから、黙っていた。正直なところ、レンアイなんてもんは面倒臭ぇ。纐纈さんは大事な同僚だったから、変なことになってその立ち位置を失くしたくなかったのかも知れない。
それに、彼女がその辺りまで思慮深く考えて云った重みのある科白に、その日は思えなかった。そして日が経つにつれて、どんどんその感覚は薄まって。ついでに日常業務では相変わらずな対応をする纐纈さんに慣れてしまって、あの日の出来事はアルコールマジックが産んだ幻想だったのかもしれない。と思うようになっていた。
嬢は、耳、首筋、鎖骨、胸へと唇で身体をなぞる。彼女の吐息が胸に掛かったとき、髪が頬に触れた。香水のような芳香剤のような、少しキツイ匂いがツンと鼻につく。
纐纈さんは、どんな匂いがするんだろう。確か、以前ふたりで飲みに行った時、カウンターの上のお品書きを手に取ろうと少し乗り出してきた彼女の身体からは、仄かに石鹸の香りがした気がする。
ふと上目遣いに見上げてきた嬢の顔を見て、慌てて視線を逸らした。
何考えてたんだろう、俺。こんな時に、纐纈さんのこと思い出すなんて。なんというか、不謹慎じゃないか。失礼だろ。断じて、纐纈さんとセックスがしたかったわけじゃない。この子が、たまたま彼女に似ていたから思い出してしまうんだ。それにきっと、彼女はこんなに胸が大きくはないし、身長や体格だってもっと小柄な気がする。
じゃあ、何処が彼女に似ていると感じるんだ。顔か。確かにこの子も纐纈さんも、一般的に男受けする顔立ちではない気がする。少なくとも俺の好みではない。でも、見慣れてくるとそれもかわいいかな、と思うのも事実だ。いつも無表情で笑わない彼女が、飲みに行ったときだけよく笑顔になった。化粧っ気がなくて、俺たちと同じ男勝りな仕事をしている彼女のグラスを持つ仕草が意外に女性らしくてどきっとした。そういえば、服装だってそうだったような気がする。作業着にジャンパー姿しか見たことのなかった彼女の太股と首筋が見えたとき、あぁ、この人女の子だったんだ、と思ったんだ。
「あれ、俺が一番だと思ったのに、イワちゃんもう終わってたの」
待合でオレンジジュースを飲みながらふたりを待っていると、福本さんが出てきた。やんちゃな表情になって、俺が座るソファーに腰掛け、耳打ちするように問う。
「もしかして、今回もハズレだった、」
風俗店で指名もせずに入って、自分の好みの女の子に当たることなんて早々無い。若い子に当たればまだマシな方で、自分より十も十五も年上のオバサンに当たる事だって珍しくないんだ。そんな時は目の前の事実を極力見ないようにして、射精することだけに集中する。年上である分、テクニックがあると信じて。店にいるのはみんな「女の子」で、俺たちはそんな「女の子」と過激なサービスで遊ぶため身体も懐もみんなみんな曝け出してスッキリしに来ているんだから。
「福本さんこそ。いつもより早くないスか」
「いやぁ、今日の子はハズレだよ。三つも年上でしかもデブ」
「それは巨乳っていうんスよ」
「イワちゃんのそのプラス思考、見習いたいもんだわー」
福本さんは万年独り身の俺と違って常に周りに女がいる。正直、こんな店に来る必要なんて無い。だからか知らないが、大抵理想が高すぎる気がする。金払ってんだからカワイイ子とエッチしたいのは当たり前じゃん、とこの人は答えるだろうけど。
「で。担当の子、誰に似てた、」
どきり、とした。誰にって。それは、芸能人に喩えると、っていう単純な質問だった筈なのに、またついうっかり纐纈さんの顔を思い出してしまったから。慌ててその思考を脳内から消し去り、俺の常套句である科白を口にする。
「中学時代に好きだった子に似てました」
「……相変わらず夢見てんねぇ」
「夢ぐらい見させてくださいよ、溜まってんすから」
「カノジョ作ればいいのに」
「相手がいません」
多少口を尖らせる。嫌味でないことは判っていたが、この人は何故か次から次へと恋人が出来、途切れたことが無い。
「青木、まだヤってんのかな。遅いっスねー」
「俺たちが早いんだって」
待合室にある自動販売機に小銭を入れながら、福本さんが云った。
風俗に行くときは飲み会四件目以降、景気のいいボーナスの時期か誰かの送別会の後と相場は決まっていた。家では右手が恋人の俺からしたら、生身の女の子に触れる機会なんて早々無い。二十代半ば。相手がいなくても、お年頃の成人男子の並み程度には性欲はある。セックスはしたい。でも、お店で抜くのは正直マスターベーションと大差無いことも、終わってから気付く。嬢の顔なんて、誰一人として覚えていない。実際に相手にしている女の子の顔は極力見ないようにしていた。嬢の向こうに、昔すきだった子を重ねて見たりしている自分がいる。その学生時代にすきだった子に、今更未練があるわけではない。つまり、やっぱり、セックスに求めるものはアイとかコイって感情なんだろうと思う。
なんてキレイごとを云っても、結局は性欲に突き動かされて、金で仮初めのアイを買ってるんだろうけれど。
暫くしたら扉が空いて、死んだフナみたいな目をした青木が姿を現した。
「何だその目は」
「岩原、もう一件付き合えっ」
「……いいけど。俺はヤんないかんね」
しれっと答えた俺に、青木はムキになって叫ぶ。
「だいたいさぁ、ここのパネルの写真、修正酷くないか。全然別人じゃん」
「パネルに修正はつき物でしょ」
「騙された。しかもヘタクソ」
「じゃー熟女専門店行く、」
「それもヤだ」
「ヌきたいんじゃなかったの。青木は女の子に幻想抱きすぎ。そんなかわいい子がこんな店に勤めてるわけないでしょ」
「お前は枯れすぎなんだよ、岩原。一番若いくせに」
同期の青木は二個年上だった。確かに自分でも、オッサン臭い発言をしているとは思う。
「大体あのちかたん似の嬢で満足する辺りが小っさい」
何だ、青木も同じこと思ってたんだ。纐纈さんのことを、陰で俺らは「ちかたん」と呼んでいた。本人の前では絶対云えないけれど。コウケツさんの苗字は堅苦しかったし、名前がひらがなで読みやすかったからってのもあるけれど、職場で唯一の女性社員ということもあって、いい意味でも悪い意味でも彼女は目立ってしまっていたから。
纐纈ちか子。今年で二十九歳。俺より一年先輩で、年は三つ上。職場のアイドルには程遠い、元来、目立たないタイプの女の子だった。
*----------------------------*
・・・気まぐれに続く?
物語と主人公のモデルは学生時代にアルバイトをしていたコンビニの仲間たちとその常連客のおねえさん。そして今の職場と自分自身。
職場のアイドルには程遠い、間違ってもかわいいとは形容できない女性がヒロインとして登場する、アラサー女の恋愛事情です。(笑)
最近、「大人の女性のための少女まんが」ってやつにはまってまして。
そういった雰囲気のある青年漫画(主に恋愛モノ)をBOOK OFFでまとめ買いしてよく読みます。
だからそんな雰囲気を目指したつもり。女性の職場にいないため、オンナゴコロが判らなさ過ぎて女性を主役には据えられませんでしたが、これは「オトメ小説」です!(断言)
*----------------------------*
こういう店に来ることに慣れてしまったのはいつからだろう。
熊沢チーフの送別会という名の宴会でべろべろに酔っ払って、そのままの流れで団体様八名程度でキャバクラに大移動。サービスタイムが終わる一時間の間に店を出てまた新規の客として次の店へと梯子をし、気付いたら熊沢さんはいなくなっていた。残ったのは俺と青木と福本さんの三人。記憶が飛ぶくらい飲んでた割には見た目は平常心を辛うじて保っているように見えたらしい。
個室に案内された部屋で上着を脱ぎながらそんなことを思った。だってこういう店は、泥酔客はお断りだったはずだ。
「はじめまして、アヤです。よろしくお願いしますね」
少し鼻に掛かった声で、淡いピンクのベビードール姿の嬢が言った。壁紙の色は原色がかった黄色。これが興奮を煽る色なのかどうかは定かではないが、自分の部屋には絶対にチョイスしない色であることだけは確かだ。それが、非日常を演出するという意味では効果的なのかもしれない。
「お名前お聞きしてもよろしいですか、」
あと、好みのプレイ内容と。と付け加えられる。
「……岩原昭俊です」
壁に掛かったハンガーを見ながらネクタイを緩める。時間は限られているんだから、さっさとコンディションを整えなければならない。
「やだぁ、それ、本名でしょう、」
嬢は少し笑いながら云った。じゃああたしはなんて呼べばいい、イワハラさん、と甘えた声で聞いてくる。何でもいいっすよ。云いながら、ベルトを外してそれも一緒にハンガーにかけた。
「ジブン、嘘吐くの苦手なんスよ。だから言っちゃいますけど、こういうトコ来るのも久しぶりだし、ぶっちゃけセックスだって何年もご無沙汰です」
アルコールは人を饒舌にする。云いたいことも、云わなくていいことも、心の声も、駄々漏れに垂れ流してしまったりするものだ。嬢は、あら、と口に手を当ててから、うーんと宙を軽く掻き混ぜる。
「じゃあシュチエーションは恋人風、でいいですか、」
そうっスねー、と適当に返事してベッドに腰を掛けた。彼女はすぐ隣に寄り添うように座ってくる。細い太股の付け根で止まったベビードールのフリルの丈が、実に絶妙だ。見えそうで見えない位置でふわりと揺れる。
「本名名乗ってくれたから、あたしもひとつだけ本当のこと、云っちゃおうかな」
どうぞ。と云うと、本当は二十八歳なのよ、アキくん。と彼女が突然妖艶な声音で云ったもんだから、ついうっかり顔を上げてしまった。
視線がぶつかる。
「やっと目、合わせてくれた」
そう云って微笑んだ彼女の顔を見て、どきりとした。当たりだったからか。嬢が、妄想の範疇よりかわいかったからか。否。そうでは無い。
似てる。と思ったからだ。ウチの会社の、纐纈さんに。
「アキくんって、ゼッタイ、あたしより年下だよねぇ」
「プロフ、見たんでしょ。二十五歳って」
「ウン、見たよ。だから、あなたより年下の設定にしたんだけど、さっきのコクハク聞いて、実年齢でいっちゃおーって」
「莫迦にしてンすか、」
「違うよ。お姉さんが何でも教えてあげるって、云いたいの」
そう云って彼女は唇を重ねてきた。首に、腕が廻される。薄いシャツ越しに、たわわな胸が触れた。薄っすらと、舌が入ってくる感触。
「あの、おれ、オプション無しでって…」
追加料金を払う金は残っていないはずだった。ベロチューは頼んでいない。俺はお店で過剰なサービスを追加したいとは思わない。必要最小限のサービスだけで充分だった。女の子の肌に触れることが出来て、運良く相手の子が上手かったり相性が良かったりして、気持ちよく射精出来ればそれで満足だ。
「いーの、黙って。これはサービス」
彼女は離した唇に人差し指を当てて、ウィスパーボイスで答えた。そのまま、肩に廻した手が、腰の辺りまで降りてくる。
「あたし、岩原くんのことすきだなー」
半年前。居酒屋のカウンターで聞いた科白を不意に思い出した。
「本当はね、いつかあなたの恋人になりたいの」
ウイスキーのグラスを傾けながら、蔓延の笑みで云った彼女に、俺は一言も返せなかった。纐纈さんのことは、好きでも嫌いでもなかった。どちらかというと、多分すきな方だった。でも彼女は、俺の答えを期待していないように見えたから、黙っていた。正直なところ、レンアイなんてもんは面倒臭ぇ。纐纈さんは大事な同僚だったから、変なことになってその立ち位置を失くしたくなかったのかも知れない。
それに、彼女がその辺りまで思慮深く考えて云った重みのある科白に、その日は思えなかった。そして日が経つにつれて、どんどんその感覚は薄まって。ついでに日常業務では相変わらずな対応をする纐纈さんに慣れてしまって、あの日の出来事はアルコールマジックが産んだ幻想だったのかもしれない。と思うようになっていた。
嬢は、耳、首筋、鎖骨、胸へと唇で身体をなぞる。彼女の吐息が胸に掛かったとき、髪が頬に触れた。香水のような芳香剤のような、少しキツイ匂いがツンと鼻につく。
纐纈さんは、どんな匂いがするんだろう。確か、以前ふたりで飲みに行った時、カウンターの上のお品書きを手に取ろうと少し乗り出してきた彼女の身体からは、仄かに石鹸の香りがした気がする。
ふと上目遣いに見上げてきた嬢の顔を見て、慌てて視線を逸らした。
何考えてたんだろう、俺。こんな時に、纐纈さんのこと思い出すなんて。なんというか、不謹慎じゃないか。失礼だろ。断じて、纐纈さんとセックスがしたかったわけじゃない。この子が、たまたま彼女に似ていたから思い出してしまうんだ。それにきっと、彼女はこんなに胸が大きくはないし、身長や体格だってもっと小柄な気がする。
じゃあ、何処が彼女に似ていると感じるんだ。顔か。確かにこの子も纐纈さんも、一般的に男受けする顔立ちではない気がする。少なくとも俺の好みではない。でも、見慣れてくるとそれもかわいいかな、と思うのも事実だ。いつも無表情で笑わない彼女が、飲みに行ったときだけよく笑顔になった。化粧っ気がなくて、俺たちと同じ男勝りな仕事をしている彼女のグラスを持つ仕草が意外に女性らしくてどきっとした。そういえば、服装だってそうだったような気がする。作業着にジャンパー姿しか見たことのなかった彼女の太股と首筋が見えたとき、あぁ、この人女の子だったんだ、と思ったんだ。
「あれ、俺が一番だと思ったのに、イワちゃんもう終わってたの」
待合でオレンジジュースを飲みながらふたりを待っていると、福本さんが出てきた。やんちゃな表情になって、俺が座るソファーに腰掛け、耳打ちするように問う。
「もしかして、今回もハズレだった、」
風俗店で指名もせずに入って、自分の好みの女の子に当たることなんて早々無い。若い子に当たればまだマシな方で、自分より十も十五も年上のオバサンに当たる事だって珍しくないんだ。そんな時は目の前の事実を極力見ないようにして、射精することだけに集中する。年上である分、テクニックがあると信じて。店にいるのはみんな「女の子」で、俺たちはそんな「女の子」と過激なサービスで遊ぶため身体も懐もみんなみんな曝け出してスッキリしに来ているんだから。
「福本さんこそ。いつもより早くないスか」
「いやぁ、今日の子はハズレだよ。三つも年上でしかもデブ」
「それは巨乳っていうんスよ」
「イワちゃんのそのプラス思考、見習いたいもんだわー」
福本さんは万年独り身の俺と違って常に周りに女がいる。正直、こんな店に来る必要なんて無い。だからか知らないが、大抵理想が高すぎる気がする。金払ってんだからカワイイ子とエッチしたいのは当たり前じゃん、とこの人は答えるだろうけど。
「で。担当の子、誰に似てた、」
どきり、とした。誰にって。それは、芸能人に喩えると、っていう単純な質問だった筈なのに、またついうっかり纐纈さんの顔を思い出してしまったから。慌ててその思考を脳内から消し去り、俺の常套句である科白を口にする。
「中学時代に好きだった子に似てました」
「……相変わらず夢見てんねぇ」
「夢ぐらい見させてくださいよ、溜まってんすから」
「カノジョ作ればいいのに」
「相手がいません」
多少口を尖らせる。嫌味でないことは判っていたが、この人は何故か次から次へと恋人が出来、途切れたことが無い。
「青木、まだヤってんのかな。遅いっスねー」
「俺たちが早いんだって」
待合室にある自動販売機に小銭を入れながら、福本さんが云った。
風俗に行くときは飲み会四件目以降、景気のいいボーナスの時期か誰かの送別会の後と相場は決まっていた。家では右手が恋人の俺からしたら、生身の女の子に触れる機会なんて早々無い。二十代半ば。相手がいなくても、お年頃の成人男子の並み程度には性欲はある。セックスはしたい。でも、お店で抜くのは正直マスターベーションと大差無いことも、終わってから気付く。嬢の顔なんて、誰一人として覚えていない。実際に相手にしている女の子の顔は極力見ないようにしていた。嬢の向こうに、昔すきだった子を重ねて見たりしている自分がいる。その学生時代にすきだった子に、今更未練があるわけではない。つまり、やっぱり、セックスに求めるものはアイとかコイって感情なんだろうと思う。
なんてキレイごとを云っても、結局は性欲に突き動かされて、金で仮初めのアイを買ってるんだろうけれど。
暫くしたら扉が空いて、死んだフナみたいな目をした青木が姿を現した。
「何だその目は」
「岩原、もう一件付き合えっ」
「……いいけど。俺はヤんないかんね」
しれっと答えた俺に、青木はムキになって叫ぶ。
「だいたいさぁ、ここのパネルの写真、修正酷くないか。全然別人じゃん」
「パネルに修正はつき物でしょ」
「騙された。しかもヘタクソ」
「じゃー熟女専門店行く、」
「それもヤだ」
「ヌきたいんじゃなかったの。青木は女の子に幻想抱きすぎ。そんなかわいい子がこんな店に勤めてるわけないでしょ」
「お前は枯れすぎなんだよ、岩原。一番若いくせに」
同期の青木は二個年上だった。確かに自分でも、オッサン臭い発言をしているとは思う。
「大体あのちかたん似の嬢で満足する辺りが小っさい」
何だ、青木も同じこと思ってたんだ。纐纈さんのことを、陰で俺らは「ちかたん」と呼んでいた。本人の前では絶対云えないけれど。コウケツさんの苗字は堅苦しかったし、名前がひらがなで読みやすかったからってのもあるけれど、職場で唯一の女性社員ということもあって、いい意味でも悪い意味でも彼女は目立ってしまっていたから。
纐纈ちか子。今年で二十九歳。俺より一年先輩で、年は三つ上。職場のアイドルには程遠い、元来、目立たないタイプの女の子だった。
*----------------------------*
・・・気まぐれに続く?
物語と主人公のモデルは学生時代にアルバイトをしていたコンビニの仲間たちとその常連客のおねえさん。そして今の職場と自分自身。
職場のアイドルには程遠い、間違ってもかわいいとは形容できない女性がヒロインとして登場する、アラサー女の恋愛事情です。(笑)
2012/03/28/Wed
2012/03/28/Wed
仕事が出来る出来ないに関わらず、資格が上位資格だとかどうかに関わらず、センパイに頼りたいことってあるみたいです。
私は正社員から入社しなかった関係やら、自分が勉強を怠慢した関係やら、所属している課の関係やらで、現場入ってる年数が長い割りには資格をあまり持っておらず、そもそも器用な方ではないのでそんなに仕事が出来るわけではありません。
でも、何かちょっとしたことを尋ねたい時って、やっぱり自分よりは一つでも目上の人に当たりたいものですよね。
同じ内容であれば、後輩に頼るのはさすがに格好悪いし、示しもつかないし。
同じ課のデンくんなんて、明らかに私より要領がよくて仕事だって出来そう(←ここがミソ(笑))なのに、私がいると頼りまくりです。
Hちゃんだって同じタイプ。
たまに「沢村さんこれお願いしますー」って持ってきた仕事をみて、「お前…これ自分でやるの面倒臭いだけだろ?」って言ったらペロっと舌を出して「あ、バレました?」て言ったりします。
そんなこんなとは別の話ですが、最近、隣の課のミケちんと同じ立場で現場に入ることが以前より増えてきました。
お互いそれぞれの業務の責任者の立場で入ることが多いんですが、ちょっとした規定のことや、書類の書き方など、大したことないようなことを彼から聞かれることが多いです。
昨夜も、えっ、あんた入社6年目でしょ?!何で今さらそんなこと聞いてくるの?!
と内心驚きましたが、そこは淡々と聞いて教えてあげることにしている沢村サン。
だって多分、そういった初歩的な「何で今更?!」と思われるような内容だからこそ、他の人に聞き辛くて私に聞いてきてくれてるのかもしれない…と思うからです。
ここで少しでも「何で今更?」な空気を私が出してしまったら、きっと彼らは誰にも尋ね辛くなってしまう。
沢村さんならケロリとした顔をして「あー、ここはね、こうすればいいんだよー」と教えてくれる、気軽なセンパイでいたいものです。
来月、メインの責任者(先日訓練を受けて独り立ちしたばかりのLM業務)の席で彼と隣の席になることが判明しましたので、そういったちょっとした業務などを気軽に優しく教えて上げられたらなぁ、と思います。
きっと内心びびってるけど顔に出すことの出来ない、彼らのために。
……私もLM業務、初心者ですけどね(笑)
私は正社員から入社しなかった関係やら、自分が勉強を怠慢した関係やら、所属している課の関係やらで、現場入ってる年数が長い割りには資格をあまり持っておらず、そもそも器用な方ではないのでそんなに仕事が出来るわけではありません。
でも、何かちょっとしたことを尋ねたい時って、やっぱり自分よりは一つでも目上の人に当たりたいものですよね。
同じ内容であれば、後輩に頼るのはさすがに格好悪いし、示しもつかないし。
同じ課のデンくんなんて、明らかに私より要領がよくて仕事だって出来そう(←ここがミソ(笑))なのに、私がいると頼りまくりです。
Hちゃんだって同じタイプ。
たまに「沢村さんこれお願いしますー」って持ってきた仕事をみて、「お前…これ自分でやるの面倒臭いだけだろ?」って言ったらペロっと舌を出して「あ、バレました?」て言ったりします。
そんなこんなとは別の話ですが、最近、隣の課のミケちんと同じ立場で現場に入ることが以前より増えてきました。
お互いそれぞれの業務の責任者の立場で入ることが多いんですが、ちょっとした規定のことや、書類の書き方など、大したことないようなことを彼から聞かれることが多いです。
昨夜も、えっ、あんた入社6年目でしょ?!何で今さらそんなこと聞いてくるの?!
と内心驚きましたが、そこは淡々と聞いて教えてあげることにしている沢村サン。
だって多分、そういった初歩的な「何で今更?!」と思われるような内容だからこそ、他の人に聞き辛くて私に聞いてきてくれてるのかもしれない…と思うからです。
ここで少しでも「何で今更?」な空気を私が出してしまったら、きっと彼らは誰にも尋ね辛くなってしまう。
沢村さんならケロリとした顔をして「あー、ここはね、こうすればいいんだよー」と教えてくれる、気軽なセンパイでいたいものです。
来月、メインの責任者(先日訓練を受けて独り立ちしたばかりのLM業務)の席で彼と隣の席になることが判明しましたので、そういったちょっとした業務などを気軽に優しく教えて上げられたらなぁ、と思います。
きっと内心びびってるけど顔に出すことの出来ない、彼らのために。
……私もLM業務、初心者ですけどね(笑)
2012/03/28/Wed
昨夜、夜休憩中。
タバコ部屋で同じ課の先輩とだらだらしていたら、お疲れさんっすー。といつもの調子で夜勤の格好の後輩・ヒチくんが入ってきました。
今月いっぱいでこの職場を離れてしまうヒチくん。
哀愁深い気持ちで彼の顔を見上げると、なんだか顔が傷だらけ!!!
「どーしたの?!その顔!」
驚いて言うと、いやぁー昨日チャリで転んじゃって。と。
何でチャリで転ぶんだ!
「いゃあね、急に人が飛び出してきたんすよ。まぁ、酔ってたのも原因だと思うんすけどね…」
それだよ、原因は!
酔ってなかったらチャリで転んで顔からダイブしないって……
それにしても、鼻の頭ではなく付け根と顎を大きくケガしている模様。
包帯を巻いた顎はなんと今朝5針縫ったとのこと!!
それ、もうキレイに治んないよ……。
去年、ヒチくんの同期のチンペも仕事中にチャリで側溝にはまり、顎を2針ほど縫ってましたが…顎に跡残ってます。。。
ヒチくん、男前な顔が台無し。
てゆうか、さすがのあたしでも一応「女の子」なんで、もし顔にケガしたらソッコーで病院に行きそうですが(でも去年バイクで事故った時は顔じゃなかったんで家の医療用スプーンで傷口の膿をかき出していた女ですが)、そこはさすが男の子、起きて枕が血塗れになってるのを見て初めて怖くなって行ったそうな…。
そんな話を笑いながら(悪いとは思ったけど爆笑しながら)してると、こそっとタバコ部屋のドアが開いて覗き込んでくる子が。
コソコソ覗き込みながら、くすくすと笑っています。
「中途半端に開けてないで、入ってこいって!」
笑いながらあたしが呼び込むと、大笑いしながら入ってきました。
彼はヒチくんの相方のミケちん。
昨日一緒に飲んでいた面子の一員らしく、キズだらけになったヒチくんの顔を笑いに来たのでした。
関係ないけど、半年前までこの部屋の常連だったミケちんはまだ禁煙が続いている様子。
仲良しな関係ですが、この2帖ほどの狭いタバコ部屋に過去3人になったときも、何故か誰も喋らず煙を吐いて終わるだけだったので、今こうやってこの場所で笑って話てるのが珍しく感じました。
ヒチくんはあの顔のまま、4月1日に新しい会社の社員証の写真を撮って、初めて出会う人たちにはじめましてな挨拶をするのですね……(笑)←失礼。
タバコ部屋で同じ課の先輩とだらだらしていたら、お疲れさんっすー。といつもの調子で夜勤の格好の後輩・ヒチくんが入ってきました。
今月いっぱいでこの職場を離れてしまうヒチくん。
哀愁深い気持ちで彼の顔を見上げると、なんだか顔が傷だらけ!!!
「どーしたの?!その顔!」
驚いて言うと、いやぁー昨日チャリで転んじゃって。と。
何でチャリで転ぶんだ!
「いゃあね、急に人が飛び出してきたんすよ。まぁ、酔ってたのも原因だと思うんすけどね…」
それだよ、原因は!
酔ってなかったらチャリで転んで顔からダイブしないって……
それにしても、鼻の頭ではなく付け根と顎を大きくケガしている模様。
包帯を巻いた顎はなんと今朝5針縫ったとのこと!!
それ、もうキレイに治んないよ……。
去年、ヒチくんの同期のチンペも仕事中にチャリで側溝にはまり、顎を2針ほど縫ってましたが…顎に跡残ってます。。。
ヒチくん、男前な顔が台無し。
てゆうか、さすがのあたしでも一応「女の子」なんで、もし顔にケガしたらソッコーで病院に行きそうですが(でも去年バイクで事故った時は顔じゃなかったんで家の医療用スプーンで傷口の膿をかき出していた女ですが)、そこはさすが男の子、起きて枕が血塗れになってるのを見て初めて怖くなって行ったそうな…。
そんな話を笑いながら(悪いとは思ったけど爆笑しながら)してると、こそっとタバコ部屋のドアが開いて覗き込んでくる子が。
コソコソ覗き込みながら、くすくすと笑っています。
「中途半端に開けてないで、入ってこいって!」
笑いながらあたしが呼び込むと、大笑いしながら入ってきました。
彼はヒチくんの相方のミケちん。
昨日一緒に飲んでいた面子の一員らしく、キズだらけになったヒチくんの顔を笑いに来たのでした。
関係ないけど、半年前までこの部屋の常連だったミケちんはまだ禁煙が続いている様子。
仲良しな関係ですが、この2帖ほどの狭いタバコ部屋に過去3人になったときも、何故か誰も喋らず煙を吐いて終わるだけだったので、今こうやってこの場所で笑って話てるのが珍しく感じました。
ヒチくんはあの顔のまま、4月1日に新しい会社の社員証の写真を撮って、初めて出会う人たちにはじめましてな挨拶をするのですね……(笑)←失礼。
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サワムラヨウコ
自己紹介:
二十代半ば(から始めたこのブログ・・・2014年現在、三十路突入中)、大阪市東成区出身。
乗り物の整備をしている、しがないサラリーマン。
3度の飯より睡眠、パンクなライブ、電車読書、などを好む。
この名前表記のまま、関西小劇団で素人脚本家として細々と活動中でもある。
1997年頃~2006年ごろまで、「ハル」「サワムラハル」のHNで創作小説サイトで細々とネットの住民してたがサーバーダウン&引越しによるネット環境消滅が原因で3年ほど音信不通に。。。
あの頃の自分を知っているヒトが偶然にもここを通りかかるのはキセキに近いがそれを願わずにはいられない。
乗り物の整備をしている、しがないサラリーマン。
3度の飯より睡眠、パンクなライブ、電車読書、などを好む。
この名前表記のまま、関西小劇団で素人脚本家として細々と活動中でもある。
1997年頃~2006年ごろまで、「ハル」「サワムラハル」のHNで創作小説サイトで細々とネットの住民してたがサーバーダウン&引越しによるネット環境消滅が原因で3年ほど音信不通に。。。
あの頃の自分を知っているヒトが偶然にもここを通りかかるのはキセキに近いがそれを願わずにはいられない。
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