何も出来ない。

弟のように、大切に思っている、同じ部署の後輩がいます。


人知れず悩んでいた彼に、誰も気付いてあげれず、予測出来たはずのあたしも気付いてあげれず、事が起きてしまってから飛び上がるように動きました。


彼の住む家まで自転車を飛ばし、チャイムを鳴らすとしばらくの時間を置いて出てきてくれました。


彼の表情は、曇りのない素顔で。


あぁ、もう答えが出たんだな。
……出て、しまったんだな。

と、いう不安が過りました。



彼をよく知る身から考えれば、個人的に彼のことを思えば、それは正解のような気がします。

でも。

ひとつだけワガママを言わせて。



ひとは誰でもひとりで生きているわけではなくて、ひとと関わり合うことは少なからず相手の人生をも巻き込んでいっているのです。


あたしの人生に、お前という同僚が必要だよ。

あたしは、お前がいるから頑張れたんだよ。



飲み屋で酒を煽りながら、何度も何度も言いました。

「…行かないで。と言われると、益々どっか行きたくなっちゃうんですよ」



そうだね。


お前はそういう性格だったよ。


判った。
すきにしなよ。

お前が、生きたいように、生きてくれ。


「はい、そうします！」