ナノ(♂)×コハ(♀)～持ちつ持たれつな 男女の関係

「あいつ、本当に面倒臭いっすよ～」
とコハは言う。

彼女の言う「あいつ」とは、うちの会社の入社５年目２４歳のナノのことだ。

コハは社会人３年目。でもナノと同い年の２４歳。

ふたりは先輩と後輩の間柄のはずだけど、時にあだ名や呼び捨てで呼び合っていて、ほとんど敬語も使っていない。
うちの現場では異質な迷コンビ。…かもしれない。


コハは何でもハキハキ言ってしまう元気系(すぎる)の女の子。

ナノはボソボソ喋る肌の弱い、でもちょっと女たらしな印象が残ってしまう残念な男の子。


ふたりはお互いに下らない用事でパシリのように相手を呼び出して、車で送って貰いあっているそうな。

まさに、持ちつ持たれつな男女の関係。

「コハ、もうナノと付き合ってあげてよ。あいつ女に飢えてんだよー」
酔った時に散々悪絡みされた沢村はコハに押し付けるように、というよりは彼らの真相を少し探るつもりで聞いてみた。
するとコハは間髪入れずにこう答えた。
「イヤですよ！生理的に無理です！ナノちゃんは都合のいい男止まりなんですよ」


……何かあったな。


ナノは手が早くて失敗するタイプだと思う。
紳士的な態度をいつも取ってくれるけど、全部の行動が「この子、軽そう」という印象になってしまって、裏目に出ているのだ。

「確かに、ナノはあのままだと本命彼氏には絶対なれないね…」


まるで合わせ鏡みたいだ。
あたしもナノも、異性とは気楽に喋れるタイプなのに、空回りばかりしていて誰かの本命の恋人にはなれない。

どんな夜中でも困ってる女の子が呼び出せばすぐ駆け付けてしまう、優しくしすぎるところが「都合のいい男」に思われてしまうナノ。

タバコ片手にとっつきやすいガサツな言葉で喋りかけて、周りに女性を意識させない雰囲気が「気軽にヤれる女」だと思わせてしまうあたし。


欠点が分かっているのなら、少しずつでも直して行ければいいのに。

それが出来ないから、いつまでもひとりでいるんですよ。お互いに。


昨日、こないだの宴会以来初めて現場でナノに会った。
「お前なぁ、あれはあかんで。」
彼の顔を見るなり、あ！と叫んでこう言ったあたしに、ナノはバツの悪そうな顔をして
「すいませんでした。何も覚えてないんです」
と言った。

ウソつけ。その顔は覚えてるだろ。

その「すいません」は散々あたしに悪絡みしたことに対してなのか、帰りにラシ・オウ・ナノの同期３人で沢村サンがいなくなった(実はタクで勝手に帰ってた)責任の擦り付け合いをしてたことを言っているのか、どっちなのかな？
ねぇ、ナノくん。(笑)