現場仕事と仲間のこととか、たまにイデオロギー的なことをつれづれに。
読んだ本、すきな音楽やライブのことだとか。
脈絡無く戯言を書き殴る為の、徒然草。
2013/04/28/Sun
えっと。
ちょっと最近物語的文章を書いていなかったので、ちょっとリハビリを兼ねて単発ものをひとつ。
(去年の今頃も同じようなことを言っていたと思いますが。まぁ、あれも続けたいとは思っております。)
タイトルがクソみたいに長いですが深い意味はありません。
----------------------------------------------
二十五を過ぎた辺りから腹の弛みが気になるようになってきた。太っているというわけではない。まだ。いわゆるビールっ腹ってヤツ。服を着てしまえば誰も判らないような小さな変化だったけれど、それに気づいた途端ギクッとした。最近、運動していない。三年前、ギックリ腰になったとき接骨院のセンセイに、もう若くないんだから意識して運動しないと。って云われたのを思い出したからだ。もう若くないんだから、って。その時おれはまだ二十三やぞ。オッサン、アンタに歳のこと云われるとは思わなかったよ。と思ったけれど、オッサンセンセイは云っていた。人間運動能力が最も高まるのは十六、七のとき。ハタチまではその体力を維持できるが、そっから先は下る一方やって。だから、体力維持する努力をせなあかんのや。
「でも意外やったな。持久力なさそうな気がしてたから」
隣でアップをしていたサトナカが云った。
「だからハーフに出場してんやろっ。てかお前さっきはおれのこと憧れてたゆうたクセに、随分イメージ貧弱やん」
「ごめんごめん、殴らんといて。だって不良の人たちって部活とか入ってへんし、単発的にガーッとやりあって終わるから、短距離走の方が向いてる気がして」
「不良の人たち、って」
「違うの、」
屈伸をしながら隣を見上げると、サトナカは軽く手首を回しながらにこにこしている。悪気は全くないらしい。変わった奴だ。今日おれを、ここに誘ったことも。
「違わへんけど」
答えて立ち上がった。
おれ達は市民マラソンに来ていた。天候は曇り。出発までもう暫く。田んぼの真ん中みたいな畦道で、ばらばらと横一列に並んだ参加者たちが思い思いに体を動かしている。
サトナカとは先月、中学時代の旧友の結婚式で再会した。約十年ぶりに会ったわけだが、再会って言葉が正しいのかどうかは正直判らない。何せおれは当時のサトナカをよく知らない。三年間クラスも違ったし、部活にだって入ってなかった。でも向こうは覚えていたらしい。というのも、中学時代おれはちょっとした有名人だったからだ。もちろんそれは奴が云うように、ちょっとだけ、ワルをやっていたから。今考えると、誰かに憧れられるようなことはひとつもしていなかった。しかも、いつでも上には上がいて、そういう奴らはやっぱり人の上に立つ資質みたいなものを持っていた。家庭環境が複雑で、中学生なのに土建屋の日雇い労働なんかしちゃってて、仲間割れをしたときなんかはグサッと胸に刺さるセリフでみんなをひとつにまとめ上げちゃうような、そんな存在。おれはただの二番煎じだった。グレてた理由なんて、クソくだらねぇ。ちっぽけで、どうでもいいようなことだ。でもサトナカには、そんなおれがカッコよく映っていたらしい。
旧友の結婚式は地元奈良の片田舎で行われたが、大阪に出てきていたおれとサトナカは偶然住んでいる場所も近所だった。そんなわけで一緒になった帰り路、マラソン参加に誘われたわけだ。マラソンなんてやったことないし、体育の授業にあった持久走は大嫌いだったが、運動不足解消のいいきっかけになるかもしれない。そう思い、今に至る。
「なぁ、よしだ桃花って、知ってる」
「は、」
「知らんの、AV女優の」
「何やねん、突然」
「あれ、二組におった土師洋子らしいで」
突然、サトナカはおかしなことを云い出した。係りの人間が、もう間もなくスタートします、選手の方はスタートラインまでお進みください、と拡張器でアナウンスしている。
「誰それ。同級生、」
「同級生。ほら、酷いドモリでなかよし学級に登校してた子」
二組の重度の吃音で障害児学級に登校していた女子。そう云えばそんな子、いたような気がする。
「同じクラスやった子ぉがアダルトビデオで全裸になってるって、ちょっと複雑な心境やったわ」
「見たの、」
「もちろん。知らんのやったら今度よしだ桃花で検索してみれば。いっぱい出てくるから」
周りの参加者が流れて行くのに従って、おれたちはスタートラインに立った。サトナカが変なことを云った所為で、何だかもやもやする。もうすぐ、走らなきゃならないのに。
「あ、憧れてたのはホンマやで」
また突然、サトナカが云った。
位置に付いて、よーい。
「二中のアイコっていえば、高校でもけっこう通じたよ」
ドン。
-------------------------------------------------------------------------------------------
つづく。
ちょっと最近物語的文章を書いていなかったので、ちょっとリハビリを兼ねて単発ものをひとつ。
(去年の今頃も同じようなことを言っていたと思いますが。まぁ、あれも続けたいとは思っております。)
タイトルがクソみたいに長いですが深い意味はありません。
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二十五を過ぎた辺りから腹の弛みが気になるようになってきた。太っているというわけではない。まだ。いわゆるビールっ腹ってヤツ。服を着てしまえば誰も判らないような小さな変化だったけれど、それに気づいた途端ギクッとした。最近、運動していない。三年前、ギックリ腰になったとき接骨院のセンセイに、もう若くないんだから意識して運動しないと。って云われたのを思い出したからだ。もう若くないんだから、って。その時おれはまだ二十三やぞ。オッサン、アンタに歳のこと云われるとは思わなかったよ。と思ったけれど、オッサンセンセイは云っていた。人間運動能力が最も高まるのは十六、七のとき。ハタチまではその体力を維持できるが、そっから先は下る一方やって。だから、体力維持する努力をせなあかんのや。
「でも意外やったな。持久力なさそうな気がしてたから」
隣でアップをしていたサトナカが云った。
「だからハーフに出場してんやろっ。てかお前さっきはおれのこと憧れてたゆうたクセに、随分イメージ貧弱やん」
「ごめんごめん、殴らんといて。だって不良の人たちって部活とか入ってへんし、単発的にガーッとやりあって終わるから、短距離走の方が向いてる気がして」
「不良の人たち、って」
「違うの、」
屈伸をしながら隣を見上げると、サトナカは軽く手首を回しながらにこにこしている。悪気は全くないらしい。変わった奴だ。今日おれを、ここに誘ったことも。
「違わへんけど」
答えて立ち上がった。
おれ達は市民マラソンに来ていた。天候は曇り。出発までもう暫く。田んぼの真ん中みたいな畦道で、ばらばらと横一列に並んだ参加者たちが思い思いに体を動かしている。
サトナカとは先月、中学時代の旧友の結婚式で再会した。約十年ぶりに会ったわけだが、再会って言葉が正しいのかどうかは正直判らない。何せおれは当時のサトナカをよく知らない。三年間クラスも違ったし、部活にだって入ってなかった。でも向こうは覚えていたらしい。というのも、中学時代おれはちょっとした有名人だったからだ。もちろんそれは奴が云うように、ちょっとだけ、ワルをやっていたから。今考えると、誰かに憧れられるようなことはひとつもしていなかった。しかも、いつでも上には上がいて、そういう奴らはやっぱり人の上に立つ資質みたいなものを持っていた。家庭環境が複雑で、中学生なのに土建屋の日雇い労働なんかしちゃってて、仲間割れをしたときなんかはグサッと胸に刺さるセリフでみんなをひとつにまとめ上げちゃうような、そんな存在。おれはただの二番煎じだった。グレてた理由なんて、クソくだらねぇ。ちっぽけで、どうでもいいようなことだ。でもサトナカには、そんなおれがカッコよく映っていたらしい。
旧友の結婚式は地元奈良の片田舎で行われたが、大阪に出てきていたおれとサトナカは偶然住んでいる場所も近所だった。そんなわけで一緒になった帰り路、マラソン参加に誘われたわけだ。マラソンなんてやったことないし、体育の授業にあった持久走は大嫌いだったが、運動不足解消のいいきっかけになるかもしれない。そう思い、今に至る。
「なぁ、よしだ桃花って、知ってる」
「は、」
「知らんの、AV女優の」
「何やねん、突然」
「あれ、二組におった土師洋子らしいで」
突然、サトナカはおかしなことを云い出した。係りの人間が、もう間もなくスタートします、選手の方はスタートラインまでお進みください、と拡張器でアナウンスしている。
「誰それ。同級生、」
「同級生。ほら、酷いドモリでなかよし学級に登校してた子」
二組の重度の吃音で障害児学級に登校していた女子。そう云えばそんな子、いたような気がする。
「同じクラスやった子ぉがアダルトビデオで全裸になってるって、ちょっと複雑な心境やったわ」
「見たの、」
「もちろん。知らんのやったら今度よしだ桃花で検索してみれば。いっぱい出てくるから」
周りの参加者が流れて行くのに従って、おれたちはスタートラインに立った。サトナカが変なことを云った所為で、何だかもやもやする。もうすぐ、走らなきゃならないのに。
「あ、憧れてたのはホンマやで」
また突然、サトナカが云った。
位置に付いて、よーい。
「二中のアイコっていえば、高校でもけっこう通じたよ」
ドン。
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つづく。
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COMMENT
読みました☆
またまた、こんにちは。高瀬です。
お誕生日は冬でしたか、これは失礼!おめでとうありがとうございます。
ジブリで実写化映画あるの知っています! それが式日だったんですね。そんな内容だったのかー結構、人間ドラマに重きを置いているんですね。エヴァの監督、庵野さんも出演されていたとは驚きです。庵野監督といえば次のジブリ最新作「風立ちぬ」で声優に抜擢されたようですよ。何気に使われてますね(笑)
「真のやさしさを知っているということは、痛みを知っていることだとあたしは思う」を読ませていただきました。相変わらずリアリティがある設定ですね。
市民マラソン前に二人が話していう主人公とサトナカが会話してるところから始まるとは…切り口が違いますね。私もこの前、長い付き合いになる友人と昔話していたのですが、クラスで浮いていた子がどうなったのか、とか話していたらちょっとだけ胸が痛みました。心配、するんじゃなくて、なんでしょうか。
ちょっとサトナカ君と同じく、複雑な心境となるんですよね。
これから、どのように話が展開するのか今のところ予想がつきませんが五月病なんかに負けずお仕事も創作もがんばってください。
私なんかでよければ、またお邪魔します。
それでは、また。
お誕生日は冬でしたか、これは失礼!おめでとうありがとうございます。
ジブリで実写化映画あるの知っています! それが式日だったんですね。そんな内容だったのかー結構、人間ドラマに重きを置いているんですね。エヴァの監督、庵野さんも出演されていたとは驚きです。庵野監督といえば次のジブリ最新作「風立ちぬ」で声優に抜擢されたようですよ。何気に使われてますね(笑)
「真のやさしさを知っているということは、痛みを知っていることだとあたしは思う」を読ませていただきました。相変わらずリアリティがある設定ですね。
市民マラソン前に二人が話していう主人公とサトナカが会話してるところから始まるとは…切り口が違いますね。私もこの前、長い付き合いになる友人と昔話していたのですが、クラスで浮いていた子がどうなったのか、とか話していたらちょっとだけ胸が痛みました。心配、するんじゃなくて、なんでしょうか。
ちょっとサトナカ君と同じく、複雑な心境となるんですよね。
これから、どのように話が展開するのか今のところ予想がつきませんが五月病なんかに負けずお仕事も創作もがんばってください。
私なんかでよければ、またお邪魔します。
それでは、また。
>高瀬さん
またまたいらっしゃいませ☆ そして「はっぴーばーすでー」★☆
そういえば、こないだ(て言っても1ヶ月くらい前)に、「はっぴーばーすでー」っていう昔のバンド(邦楽)の名曲を映画化した作品を最近はまりのミニシアターに観に行きましたよ。監督は28歳!高瀬さんと同じ年の時に撮られた作品ですね!(今は1年経ってるから同い年ではないはず)
…って、かなり話題ズレました、すみません。
わざわざ、文章リハビリ小説(のようなもの)に感想頂いてありがとうございます!ほんまにありがとうございます!!
書き出しの切り口……確かに、あまり凝ったやつを、などと考えたことはないですが、書き出しはいつも悩みますね。
書きたい物語の主軸とラストが浮かんでから書き始めるタイプなんで、書き出しをどんな風に持ってくればラストにうまく行くか?て考えてます。
基本、淡々とした日常な話なんで急展開はないですが、私も続きを頑張って書きたいと思います☆
またそちらにもお邪魔しますね~
訪問ありがとうございました。
そういえば、こないだ(て言っても1ヶ月くらい前)に、「はっぴーばーすでー」っていう昔のバンド(邦楽)の名曲を映画化した作品を最近はまりのミニシアターに観に行きましたよ。監督は28歳!高瀬さんと同じ年の時に撮られた作品ですね!(今は1年経ってるから同い年ではないはず)
…って、かなり話題ズレました、すみません。
わざわざ、文章リハビリ小説(のようなもの)に感想頂いてありがとうございます!ほんまにありがとうございます!!
書き出しの切り口……確かに、あまり凝ったやつを、などと考えたことはないですが、書き出しはいつも悩みますね。
書きたい物語の主軸とラストが浮かんでから書き始めるタイプなんで、書き出しをどんな風に持ってくればラストにうまく行くか?て考えてます。
基本、淡々とした日常な話なんで急展開はないですが、私も続きを頑張って書きたいと思います☆
またそちらにもお邪魔しますね~
訪問ありがとうございました。
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サワムラの主催する小劇団…のはず。2012年に旗揚げ公演を行い、2014年現在、5月公演に向けて準備中。
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プロフィール
HN:
サワムラヨウコ
自己紹介:
二十代半ば(から始めたこのブログ・・・2014年現在、三十路突入中)、大阪市東成区出身。
乗り物の整備をしている、しがないサラリーマン。
3度の飯より睡眠、パンクなライブ、電車読書、などを好む。
この名前表記のまま、関西小劇団で素人脚本家として細々と活動中でもある。
1997年頃~2006年ごろまで、「ハル」「サワムラハル」のHNで創作小説サイトで細々とネットの住民してたがサーバーダウン&引越しによるネット環境消滅が原因で3年ほど音信不通に。。。
あの頃の自分を知っているヒトが偶然にもここを通りかかるのはキセキに近いがそれを願わずにはいられない。
乗り物の整備をしている、しがないサラリーマン。
3度の飯より睡眠、パンクなライブ、電車読書、などを好む。
この名前表記のまま、関西小劇団で素人脚本家として細々と活動中でもある。
1997年頃~2006年ごろまで、「ハル」「サワムラハル」のHNで創作小説サイトで細々とネットの住民してたがサーバーダウン&引越しによるネット環境消滅が原因で3年ほど音信不通に。。。
あの頃の自分を知っているヒトが偶然にもここを通りかかるのはキセキに近いがそれを願わずにはいられない。
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