バカには成れない

「いい年して、なーにやってんすかぁ？ナツコさんもサラリーマンなんですから、そんなしょっちゅう上司と喧嘩してちゃ駄目でしょ」

アサギの言っていることは、痛いほどよく判った。

けど、ナツコの喧嘩癖は学生時代では留まらず、入隊してからも度々続いた。


いまの上官と意見が合わないことはハナから判っていたことだ。

けど、自分の信念を侮辱されてまで黙っていられるほど、バカにはなれない。

「何でも自分の思い通りになると思ってんだったら、大間違いだってこと、教えてやったんだよ」

正義ぶってるあんたが、陰でサボったり違反行為をしてること、誰も知らないとでも思ってるのかよ？

そんなおめでたい脳ミソ着けてるわきゃあ、ないよなぁ？


「……まぁ、勝手にしてよ。ナツコさんが嫌われようが欠勤しようが、俺には関係ないですからねー」

呆れたように言いつつも、受話器の向こう側でアサギは笑っていた。
それに釣られて、ナツコも笑う。

「アサギのそうゆー性格、あたしはすきなんだけどねぇ」

何も言えないアサギの代わりに、言いたいことは全部ナツコが言っていて、真面目にやれないナツコの代わりに、無感情なまでに押し黙ったアサギはコツコツと働く。

同期入隊の同じ所属。
若いクセに妙に人生悟りきっているアサギと、いい年して感情のままにしか動けないナツコは、今も昔も変わらずバランスのいいコンビだ。



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また、上司と喧嘩しました。
そんな出来事を発散させたかった、物語。(笑)