ハリヨの夏～ふたり分の荷物

家に帰ったら、いつもと違った印象を受けるんだろうな。
と思いながら玄関の戸を開けた。

靴を積み上げてたレンガが１段、減ったのかと思った。
いままで数ある傘で隠れて見えなかったガス警報機が丸出しになってた。
食器の数が、半分に整理されていた。
そして、いつも閉じられていたとなりの部屋の引き戸が全開になっていて。
からっぽな部屋の中が見えた。



そう。
本日は、同居人の引越し日。



何度も経験していたけれど、別れは心にぽっかり孔を開ける。

解っていたことだけれど、昨日まではなんとも思わずに日常を過ごしていたけれど、きょう、当日になって、荷物が半分に減ったキッチンと、カラになった部屋を見て、急速に実感が来た。


２台積み上げていたレンジと炊飯器は一式に収まり。
歯ブラシ立てにあったハブラシはひとりぼっちに。

お鍋やお茶碗、相方のをいつも使わせてもらっていた。
今日から、何でご飯食べようか？

ふたり分のシャンプーやコンディショナー、ディスニーのスポンジでカラフルに賑わっていたお風呂に入ったときも、きっと心に開いた孔の存在を確かめるんだろうな。


あんなに狭いと思っていた２Ｋが、どうしようもなく持て余すほど、広く感じる日が来るなんて、予想できなかった。


彼女は１年と半年のシェア生活を経て、自立を果たしました。
両親から、そして自分から。
祝・一人暮らし！
２７の歳の、ちょっと遅めの大人の生活のスタート。
不安もあるだろけれど、とっても喜ばしい、幼馴染の友人の門出。





けど、きっと、この気持ちは「残された側」にしか解らない。


ウォークマンからは、PE'Zの「ハリヨの夏」が流れている。そんなセンチメンタルを大事に噛み締めます。