ただ、無心になりたかった。

こんなに仕合わせで不幸せな気分になったのは、初めて。


不謹慎かもしれません。
人様の結婚式に参列した日に、こんなことを思うのは。

でも、ひとの気持ちは一筋縄ではいかないってこと。

友人の仕合わせな姿を見届けられたのは本当に嬉しいです。
仕合わせな気分になれたし、彼女の言葉に本当に感動して涙も出ました。

でも。

式が終わって列車に乗って、大阪の雑踏に戻ってきて、我に返るのです。
いや、正確には、もっと前から。

こんな仕合わせな中にいるのに、自分は何やってんだ？
こんな真剣で真面目な仕合わせに、あたしは向き合ったことがある？
あたしは、こんな仕合わせに、巡り合うことはないだろう。
きっと。
これからも、ずっと。


こんなときに想うことは、ただひとつ。


あぁ、いまあたしに恋人がいなくてよかったなぁ。


いたらきっと、仕合わせの妄想をそのひとに重ねて、それが現実味を帯びないことに、勝手にガッカリするだろうから。


仕合わせを得る権利なんてないくせに、ぜいたく病だ。

誰かの役に立ちたいと思うことも、誰かと一緒に食卓を囲みたいと思うことも、みんなみんなぜいたく病なの。


慣れないヒールの靴で足が痛いみたいに。
手に入らないものがあることを自覚しなきゃ。


ただ、無心になりたかった。
梅田の雑踏の中で。
だからあたしはコーヒーをすする。